「三人三様に切なく、美しい」ゆきてかへらぬ みる子さんの映画レビュー(感想・評価)
三人三様に切なく、美しい
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中学生の頃に中原中也、長谷川泰子、小林秀雄の関係を知り、興味津々。逗子に住んでいたので、隣の鎌倉にいたことに親しみを感じ、映画になったのが意外に遅かったと思いました。
レビュー評価はそんなに高くなかったので様子見でしたが、良かったです。特に中原中也。木戸大聖の清潔感が、退廃的、暗くなりがちな話を救っていました。
文人たちよりも泰子の方が神経症で世話を焼かせていたなんて面白い。確かにそうだったかもしれない。
自分の元を去る彼女の身の周り品を運んであげて。小林と泰子の部屋に柱時計を贈り、自分も同じ柱時計の音を部屋で聞く中也。それに泰子は錯乱するのだが、何だかかわいい。今だったらお揃いのスマホか。
17歳の学生の身分で泰子をフランス料理のレストランに誘い、贅沢ねと言われた中也は、自分にとっての贅沢は詩なのだと語る。印象的なシーンでした。
大正時代の家、TOBACOOSの看板、ダンスホール、メリーゴーランド、無声映画、舟遊び。美しい映像と恐ろしい結核の対比。宮沢賢治や石川啄木も同じ死因だったと思うと、なんてもったいないことか。
彼らの青春の時の流れが切なく、生きた時代も切ない。でも中原中也は有言実行。短い人生でちゃんと後世に残る詩を書き、親孝行した。残され、長生きした2人には死ぬまで忘れえぬ人だったろう。まさに天使のような詩人だ。
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