「【”ワタクシ達、神経と神経で繋がっていましたの。”今作は、中原中也と小林秀雄の間を行き来する長谷川泰子の姿を軸に、三人の”奇妙な三角関係”を描いた、文学調な装いを帯びた作品である。】」ゆきてかへらぬ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ワタクシ達、神経と神経で繋がっていましたの。”今作は、中原中也と小林秀雄の間を行き来する長谷川泰子の姿を軸に、三人の”奇妙な三角関係”を描いた、文学調な装いを帯びた作品である。】
ー 今作は、ご存じの通り、長谷川泰子著「中原中也との愛 ゆきてかへらぬ」を基にしている。
若き中原中也と長谷川泰子の京都での出会いと、同棲から、二人が東京に移り住み、若き文芸批評家の小林秀雄と面識を持ち、長谷川泰子が中原中也との同棲を解消し、小林の家に同居する”奇妙な三角関係”を描いている。-
◆感想
・私は、ずっと長谷川泰子は大正から昭和にかけて、中原中也と小林秀雄の間を行き来する”ファム・ファタール”だと思っていた。
・だが、今作は上記の通り長谷川泰子著作を基にしているからか、彼女は繊細さと可愛さと我儘な面を兼ね備えた人物として描かれている。
時に嫉妬心を持ち、時に先輩女優に勝気な啖呵を吐き、時に冷たく中原の元を去り、時に神経症を患う、男(私)にとっては甚だ面倒な女性として、描かれている。
・今作の見所は、中原中也を演じた木戸大聖と、長谷川泰子を演じた広瀬すずの身体を張った演技と、二人を或る種達観した目で見る小林秀雄を演じた岡田将生の姿である。
特に、個人的には今まで観た事のないような広瀬すずの姿と岡田将生の流石の演技は、良かったと思う。
■中原の葬儀場に遅れてやって来た長谷川泰子が、彼の亡骸の胸の上に彼が幼き時に作って貰った且つて彼が自分の心臓だと言って長谷川泰子が中原の元を去る時に丸めて彼女の茶碗の中に乱暴に置いた赤い手袋を置くシーンや、小林秀雄が沈痛な顔で葬儀場の焼き場から上がる煙を見ずに、”アイツの骨を見たくない。”という姿や、長谷川泰子が小林に”私の背骨、曲がってない?つっかえ棒が無くなって、曲がってしまった気がするの。”と言う、再後半のシーンはナカナカであった。
<今作は、中原中也と小林秀雄の間を行き来する長谷川泰子の姿を軸に、三人の”奇妙な三角関係”を描いた、文学調な装いを帯びた作品である。
近年、今作の様な趣の作品は皆無に近かったので、ナカナカだった作品でもある。>