エフィ・ブリーストのレビュー・感想・評価
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眠い…退屈…
言葉で物語を進める映画
タイトルなし
原作の良さが想像できる映画
日本で書かれたドイツ文学史の本でも原作は画期的な社会小説だとして褒めていて、これは見なければと思って見たが、期待以上だった。おかしな言い方になるが、フォンターネの原作を読んではいないのに、この映画は原作の良さをしっかり再現しているに違いないと思わせる映画だった。映画ファンならファスビンター監督を褒めるべきだろうが、登場人物一人一人の語るよく考えられた言葉が、私のように人生も終盤に入ってきた者には刺さりまくる。主人公のように恵まれた環境に生まれても、人生は虚無で退屈で、社会の強いるルールに抵抗しても従っても虚しさ、寂しさから逃れられない。言葉が極めて重要な役割を果たす映画を白黒で撮った監督も正しい。
罪なき罪
こういうのが「小説の映画化」なら好きかも知れない
モノクロ、映画音楽ほぼない、小説の地の文はナレーション、登場人物の台詞は小説の中の台詞。だから訳された字幕を追いながら見るのでなくナレーションも台詞も黙読でなく音読として聞かなければならないと思った。19世紀後半、読書は音読が普通だったように。登場人物の衣装、姿形、表情、屋敷や庭園、手紙の束、海岸での決闘は原作の小説で詳細に言語化されているに違いない。演出や映像やキャスティングは監督の仕事、でも台詞は原作に忠実という映画化なら好きかも知れないと思った。エフィ・ブリースト演じるハンナ・シグラの美しさと芯の通った存在感は圧倒的だった。
エフィは常に母親の力と意向に支配されていた。母に「あなたはこうならなくては」と言われ続け年上の夫と結婚させられ夫と共に社会の上層を目指すように仕向けられた。結婚生活は夫主導、夫は若い妻を愛し大事にしているようでいて自分を飾るアクセサリーとしてしか見ていない。エフィは美しさを輝かせながらも生命力溢れる明るさは薄れてゆき病気がちになる。女中のご注進か、たまたまか恋文の束が発見されて物語は動き出す。夫は決闘を申し込む決心をする。誰一人としてエフィの気持ちや事実を問うことをしないから本当にあったことなのか、手紙での単なる恋愛ごっこなのか誰にもわからず語り手も明らかにしない。
最後は実家に戻り死の床にいるエフィ。母親は述べる。「私は娘のしつけを間違ったかもしれない」若いエフィが屈託なく笑顔で乗っていた庭のブランコは、社会と母親に息の根を止められたエフィを悼むようにもう動かない。
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