「19世紀のこと。 地方貴族の娘エフィ(ハンナ・シグラ)は、17歳に...」エフィ・ブリースト りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
19世紀のこと。 地方貴族の娘エフィ(ハンナ・シグラ)は、17歳に...
19世紀のこと。
地方貴族の娘エフィ(ハンナ・シグラ)は、17歳にもかかわらず、20歳も年上のインシュテッテン男爵と結婚させられる。
家父長制度下の当時としては、よくあることだ。
奔放なエフィを躾けようとする男爵。
堅苦しく単調な暮らしがつづく中、エフィは男爵の友人クランパス少佐と不貞を働いてしまう。
クランパス少佐は、常識にとらわれず、まだまだ頑強な男盛りだったからだ。
数年後、エフィの不貞を知った男爵は、少佐に決闘を申し込み、斃すのだが・・・
といった物語で、基本は、社会の抑圧下での女性の悲劇を描いた文芸作品。
なのだが、途中途中で挟み込まれる字幕などから、窮屈な社会システムにがんじがらめになってしまった人々のブラックコメディにも見える。
これは場面転換に用いられたホワイトのフェードイン・アウトによるところも大きい。
通常のブラックのフェードイン・アウトだと、物語の語り口が重々しくなってしまう。
軽みを出すためのホワイトだったと思料する。
ただし、通常のブラックのフェードイン・アウトやオーバーラップも用いられており、正確にはわからないが、エフィに関する場面の場合はホワイト、他の人物の場合はブラック、同日の場合はオーバーラップのようにみえた。
つまり、恣意的・適当に技法を選んでいるわけではなく、映画の「文法」として技法を選んでいる。
この映画文法により、映画を描くのが、ファスビンダー監督のすごいところでしょう。
また、鏡像演出が頻出するのだが、これは登場人物の内面にみえるが、観客自身の内面を意識させ、つまり19世紀と20世紀の差異を意識させる効果を有し、結果、19世の堅苦しさをバカバカしさに転じさせているように感じました。