「禅問答」本心 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
禅問答
本心…?
誰の?
ずっと座り心地の悪い椅子に座らされているような…最初にボタンを掛け間違えて、それをそのまま着ようとしてるような心地悪さがある。
2025年7月の表記があって、それから1年後、2026年が舞台の本作。
今より少しだけ近未来。
自由死なんて言葉が出来て、VFって技術によって仮想空間の中で死者を蘇らせる事ができる。
色々便利になってそうな世界で常識も普通もアップデートはされてる模様。だけれども主人公は貧困で絶対的な主従関係を強要される労働者だ。
彼と彼の周りは時代から見捨てられたかのようだ。
そして、とても理解できてしまう。
…これが本心?
周りは変わっても変わらない本性や性根が本心?
けどさ…本心ってさ、自分にしか分からなくない?
例えば他人に「俺の本心はコレだ!」と伝えた時、それを信じるか信じないかは委ねられたりするじゃない。
だから…自分以外は推し量れないんじゃないかと思う。
そんな中で、出てくる人々は色々本心らしい事を話してはくれるのだが、主人公だけは本心を明かさなかったような気がしてる。
ただ、それでも漏れ出してくるのが本心なんじゃないかとも思う。
過分に推察も含まれもするが…主人公は母親を愛していたのかなぁと。
最愛の女性が自死を選ぶ。重度のマザコンなのかもしれないけれど、過去の事件によって人間不信に陥ってないとも限らない。
愛する人が死を選んだ時、自分の存在価値とかが揺らぐものかもしれない。
だからこそ生き返ってほしいと強く強く願うのもかもしれない。
そうやって生き返ってきた最愛の人のある一面しか見てなかったし、見せてもらえていなかったのだと知った時の葛藤と困惑は相当だと思う。
母親って肩書に全幅の信頼を寄せていたのだろうか。
結局のところ、科学がどれだけ発達しようとも他人の本心の答え合わせなど出来やしない。
最後に母親が言った「最後だから」との本心も、それを信じるかどうかは主人公次第だ。
その人への信頼が揺らいだ時点で、本心の所在もあやふやになる。
残酷なまでの格差社会の存在は、この社会全体の本心なのかもしれないし、窮地に追い込まれてる人間は本心や本性で動きやすいって刷り込みを確立しやすくする為の舞台装置かもしれない。
そして、なぜ三吉彩花さんだけが「みよしあやか」だったのだろうか?
彼女は仮想空間の住人なのか?
それとも、主人公はまだ目覚めてなくて、この話は夢の中なのだろうか?
最後に彼は空に手を伸ばす。
ようやく目覚めるのだろうか?
目覚めた彼の手を握っているのは、2024年に付き合ってる恋人の「みよしあやか」なんだろうか?
彼は病院のベットの上で、母親への恋慕と恋人への愛情に向き合い、自身の本心を探し続けていたのだろうか?
三吉彩花=みよしあやかを整理出来ずにいる。
難解な作品だなぁって思う。
ただまぁ、主人公がVFを通して接触する人々は礼儀も礼節も弁えてない輩が多かった。
あれも格差社会における対人関係の本心なのであろうなぁ…。
こんな社会が訪れない事を祈るばかりだが、現在の日本はその入り口には立ってるように思うからそら恐ろしい。
まぁ…この作品の感想とかは個人のモノであるから、間違いなく本心だろうし、劣悪な環境とか隷属する主人公とか、そんなものを突きつけられりゃ、自分の本心を知る事にもなるのだろうなぁ。
田中裕子さんって…ナイスなキャスティングだったな。そこに居るんだけど、雲か霞のような印象だったな。
目に生気が全くなくて、仏像のような眼差しというか…なんかその眼差しには名称があったな。
なんだっけ?
半眼っていう状態で、如来の目は三昧というらしい。その説明はこの作品のテーマそのものみたいだった。
…流石であります。
◾️追記
一夜明けて、皆さまのレビューを拝読しつつふと浮かんできた単語があった。
「ありのまま」
思うに…この「ありのまま」って言う状態や状況を否定というか受け入れにくい世界観だなぁと感じた。
「死」すら蔑ろにする欲望
笑顔に矯正される母の写真
バーチャルアバターは奴隷のようだ。
本心ってのが裸の心なんだとすると、このありのままを受諾できない社会では、抑えつけて隠し遠さなければいけないものになってしまっているのであろう。
常に蔑ろにされ、抑制し隠匿せねばならないものが「本心」…いつから本心はそんな厄介なモノにカテゴライズされたのだろう。
なんだか、自分的にはようやくしっくりきた。
原作をお読みになったのですかね?
僕にはとても難解な作品でありました😅VFかあ…毒にも薬にもなりそうですね。本作のような使い方を福沢諭吉が聞いたら激昂しそうではあるなぁ😅
今日、11月21日映画 本心を観てきました。いずれこのような映画は作られると思っていましたが、内容的には100点中、60点かな。映画のラストシーンで母親と滝の近くで会話のシーンがありましたが、思い描いてた情景とは少し違っていたので?と言う気持ちです。えっ!それが
本心。思うに人間の思考は常に揺らいでいるので、確固たるものは、ないのではないか。でもVFはあった方が面白いです。生きることにおいて良い刺激になります。