「風呂敷を広げ過ぎて、テーマがぼやけてしまったように思われる」本心 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
風呂敷を広げ過ぎて、テーマがぼやけてしまったように思われる
タイトルから察するに、「身近な人の本心が分からないことの不安や焦燥」がテーマなのだろうか?
それを象徴していたのが、AIが生み出した母親に向かって、主人公が「誰だよ?」と呟くシーンだし、雇い主に成り代わって愛の告白をする主人公に対して、同居人の女性(彩花)が「誰?」と問いかけるシーンだったように思う。
ただ、相手の本心が分からないということは、昔も、今も、将来も、変わることのない永遠の課題なのだろうし、それを解決することは、AIをもってしても難しいに違いない。
実際、この映画でも、母親が主人公に伝えたかった「大切なこと」が何だったのか、どうしてそれを伝える前に亡くなってしまったのかということは分からずじまいで、ラストでAIの母親が主人公に話した内容も、主人公が「望んだこと」をAIが作り出したのではないかと思えてならない。
結局、相手の本心は、こちらで察するしかないのだろうし、ラストで、主人公の手に、手を重ね合わせたのは、主人公の「本心」を、「自分の幸せを思って自分を拒絶した」のだと察した彩花だったのではないだろうか?
その一方で、「自由死」の制度については、掘り下げ不足の感が否めないし、母親や、主人公や、彩花の過去にしても、主人公と彩花が、自分の知っていることを共有し合えば、物語として成立したはずで、わざわざの「VF(バーチャル・フィギュア)」のような仕掛けを持ち出さなくても良かったのではないかとも思う。
富める者が貧しい者を非人道的に扱う格差社会の闇や、差別に基づくカスタマー・ハラスメント、あるいは、貧困により犯罪に手を染める若者たちや、監視カメラの映像が英雄を生み出すネット社会の歪さなど、興味深いエピソードが出てくるものの、どれも描き方が中途半端で不完全燃焼なのは、残念としか言いようがない。
主人公が、高校時代に起こした事件の原因となった女子生徒が、その後、どうなったのかも気になるし、母親が付き合っていたという同性の恋人が、母親の出産後、どうなったのかという疑問も残る。
近未来のテクノロジーや、政治制度や、社会問題を物語に取り入れたかったという意欲は分からないでもないが、ここは、あまり風呂敷を広げ過ぎないで、「リアル・アバター」による「成り代わり」の問題に的を絞って、もっとシンプルな話としてまとめた方が、よりテーマが分かりやすくなったのではないかと思えてならない。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
頷きまくりのレビューでした!
tomatoさんの素晴らしいレビューと全く同じように感じたのに、自分は、なぜ、あんなダラダラレビューになったのか(°▽°)不甲斐ないですw