「生活観念と愛情が重なり合う関係は、奇跡的なことなのかもしれません」本日公休 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
生活観念と愛情が重なり合う関係は、奇跡的なことなのかもしれません
2024.9.26 字幕 京都シネマ
2023年の台湾映画(106分、G)
恩人の髪を切るために遠方に向かう理容師を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はフー・テイエンユー
原題は『本日公休』、英題は『Day Off』で「休日」という意味
物語の舞台は、台湾の台中市のとある理髪店
常連さんの髪を切ることで生計を立てているアールイ(ルー・シャオフェン、若年期:スー・リーティン)は、暇な時には電話帳を取り出して、最近見ない常連さんたちに電話営業をしていた
彼女の夫はすでに他界しているが、夫との間に長女のシン(アニー・チェン)、次女のリン(ファン・ジーヨウ)、長男のナン(シン・ミンシュアイ)を授かっていた
シンはスタイリストとして、CM撮影の現場などで活躍し、リンは美容師として都会の美容院で働いている
ナンだけはフリーター気質で、訳のわからないビジネスに手を出しては、無駄な時間を過ごしていた
ある日、電話帳の中から、かつてお世話になったコ先生(ジェン・ゾンフー)の名前を見つける
どうしているかと思って電話をすると、コ先生は病に伏していて、予後も良くないと聞かされる
そして、コ先生の長女から散髪の依頼を受けたアールイは、店を閉めて先生のいる彰化へと向かうのである
映画は、監督の母親がモデルになっている作品で、理髪店の日常が描かれている
その中でも次女の結婚観が全面に描かれていて、特に「お金」にまつわる話が多かった
長女は違反切符関連でプライベートを暴露される話が出るし、次女は経済観念の違いが離婚に発展している
次女は出張散髪を利益で考え、アールイはそういったものよりも優先するものがあることを知っている
アールイとチュアンが次女の離婚後も家族のようになれているのは、この生活感覚が似ているからのようにも思えた
人生に経済はつきもので、アールイは「親が子どもの心配をする理由」として、「経済的に困窮しないか」というものを真っ先に挙げていた
お金がなくても幸せだと開き直れる人もいる一方で、生活には欠かせないものなので、それなしでは生きてはいけない
農家の若者(チュン・ボーリン)のような生き方も可能ではあるものの、それは俗世から離れてこそ成り立つものであり、人間社会の中で生きていくには、ある程度のお金というものは必要になってくる
だが、それが第一になってしまうと幸福は遠ざかってしまう
印象的だったのは、アールイがコ先生の長女からもらったお金をチュアン(フー・モンボー)に渡したシーンで、さりげないシーンだけどとても大きな意味があるように思えた
いずれにせよ、人生経験豊富な人向けの映画で、子育てしたことがある人がハマる印象があった
ラストでアールイが友人たちとはしゃぐシーンでも、子育てを終えて、夫が亡くなってから始まる人生を謳歌しているようにも思えた
それまでにどのような人生を歩むかはとても大事なのだが、やはり価値観が近い人同士で時間を紡いでいくことが大切なのかなと感じた