「【”織機の音が響く中、胸を張って生きる。”今作は発達障害を抱えつつ、父が経営する織物工場を想い、デザイナーとして世界に羽ばたこうとする若き女性と彼女を支える人達を描くヒューマンストーリーである。】」BISHU 世界でいちばん優しい服 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”織機の音が響く中、胸を張って生きる。”今作は発達障害を抱えつつ、父が経営する織物工場を想い、デザイナーとして世界に羽ばたこうとする若き女性と彼女を支える人達を描くヒューマンストーリーである。】
ー 尾州:作中でも史織(服部樹咲)が説明するが、愛知県一宮を中心にした、毛織物の世界三大産地である。-
■神谷史織は厳格だが、常に自分を気遣いつつ織物工場を経営する父(吉田栄作)と母亡き後、彼らを支える叔母(清水美砂)に支えられ、153日掛けて高校に行けるようになっていた。高校には、親友真理子(長澤樹)もおり、彼女を支えている。
そんな時、東京でアパレル店を営んでいた姉(岡崎紗絵)が、店を畳んで戻って来る。
そして、一宮ではファッションショーが開催されることになり、天性のデッサン力を持つ史織は、自らデッサンしたオートクチュールを着てランウェイを歩くことになる。
◆感想
・発達障害を抱える史織を演じる服部樹咲さんの演技が素晴しい。発達障害の方の特徴を捉えた身振り手振り、話し方から、自らデッサンした白いオートクチュールを着てランウエイを歩く姿への変化を演じ分ける姿は、圧巻である。
・史織を支える父を演じる吉田栄作さん、叔母を演じる清水美砂さんの安定した演技も作品のクオリティと品を醸し出している。
・史織と真理子の普通科コンビと、デザイナー科の少女達(あのリーダーの美少女は誰ですか!)とのライバル心剥き出しの、けれどもコミカルな遣り取りも可笑しい。
・岡崎紗絵さん演じる姉が、現在のアパレル業界の大変さを、父が現在の日本の繊維業界の大変さを間接的に表現している所も、私が務める会社の製品が関係している所為もあるが、巧く描かれていると思う。
■今作が、只の地方創成映画になっていないのは、史織と同じく発達障害を抱えると思われる少年(黒川想矢)の存在であろう。
自然の音や、織機の音を集める少年の音の収集癖が、ランウェイで突然音が止まり座り込んでしまった史織に、彼が収録してあった織機の音を聞かせる事で、彼女に見事に再びランウェイを歩く勇気を与えるシーンと、その後背筋をピンと伸ばし堂々と自らデザインした白いオートクチュールを身に纏い、父や親友が見守る中、美しく歩く姿は、今作の白眉のシーンである。
<そして、彼女は見事にグランプリを勝ち取り、ファッションの本場であるフランスへ旅立つのである。
今作は、発達障害を抱えながら、周囲の支えに助けられ、見事に独り立ちした女性の姿を描き出したコミカル要素を絡めながら、後半はムネアツな展開になる作品なのである。>
■二日続けて、映画の中で山口智充さんと岡崎紗絵さんのお姿を拝見した。両作とも、東海地方が舞台だからかもしれないが、実に僥倖でありました。