「いろんなものを洗い流してきた女の子が、いつの間にか自分にこびりついた何かを洗い流す映画映画でした」うぉっしゅ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
いろんなものを洗い流してきた女の子が、いつの間にか自分にこびりついた何かを洗い流す映画映画でした
2025.5.8 MOVIX京都
2025年の日本映画(115分、G)
疎遠の祖母の介護を行うことになったソープ嬢を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本は岡崎育太郎
英題は『Wash Away』で「洗い流す」という意味
物語の舞台は都内某所
ソープランド「ロングライン」で働いているソープ嬢の加那(中尾有伽)は、仲間のすみれ(中川ゆかり)、久美(西堀文)とともに自由気ままな生活を送っていた
加那は、お金に任せて家事を家政婦の名取(髙木直子)に一任していて、怠惰な生活を送っていた
ある日のこと、母・早苗(磯西真喜)から電話が入り、病気のために一週間入院すると聞かされる
母の代わりに祖母・紀江(研ナオコ)の介護をすることになった加那だったが、全くの素人で、母の残したメモを頼りにして作業を始めていく
紀江は加那のことを全く認知しておらず、少し時間が空けば、「はじめまして」と言ってしまう
映画は、認知症になった家族と向き合うというものだが、疎遠ということと、ソープ嬢というところが特異点となっている
距離的には電車一本ぐらい(ロケ地だと東京都青梅市)で、8年間の疎遠の理由は察してねという感じで描かれていた
おそらくは、都内に出てきて働きはじめたものの、出費がかさんでしまい、そのまま副業を拡大させていったのだろう
そのあたりはそこまで重要な要素ではなく、介護の作業に抵抗感があまりない職業を選んだ(本来はそこまで単純ではないと思うが)のかな、と思った
タイトルは「洗う」という言葉をひらがな表記したもので、併記されていた英題は「Wash Away」だった
これには「洗い流す」という意味があるのだが、単に体を洗うという意味ではないだろう
加那の中の何かが洗い流されたというもので、その何かというものはたくさんあったと思う
その中の一つが「プライド」であり、他には「職業への貴賎」「現在地」などもあったのだろう
加那は紀江のアルバムが途中で終わっていることに意味を感じていて、語られずとも「好きなことをできる時間は限られている」ことに気づいていく
そして、現在位置を見直しつつ、8年間を埋めるために「今やっていることに全力になろう」と考えたのではないだろうか
いずれにせよ、感化されて生き方を変えるという単純なものではなく、自分自身が避けてきたものに向き合うというエンディングは良かったと思う
そんな中で、彼女自身にやりたいことが見つかり、その先に新たな未来があるのだろう
洗い流すのは上辺に付着している汚れからであり、中身を変える前にやることはたくさんある
そう言った意味において、現実的な着地点だと思うし、彼女自身が自分の仕事にやりがいを持つことができたのは良かったのではないだろうか
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