劇場公開日 2025年5月2日

「洗ったのは自分自身か」うぉっしゅ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5洗ったのは自分自身か

2025年5月5日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

主演女優は存じ上げない方ですが、共演が研ナオコさんということで、コミカルなヒューマンドラマを期待して、公開2日目に鑑賞してきました。夕方の上映回でしたが観客は自分一人で、贅沢な時間を過ごさせてもらいました。

ストーリーは、母の入院に伴い、1週間だけ認知症の祖母・紀江の介護をすることになったソープ嬢の加那は、昼は紀江の体を洗い、夜は客の体を洗うという忙しい日々を過ごすことになるが、訪問するたびに自己紹介を始める紀江に戸惑いながらも、介護を通して紀江との距離はしだいに縮まり、紀江のこれまでの人生を垣間見る中で、自分自身の生き方も見つめ直していくというもの。

いやいや引き受けた介護が紀江との交流のきっかけになり、加那が同僚や家政婦にも自分の思いを素直に伝えられるようになり、自分の生き方を見つめ直していく姿が鮮やかに描かれます

客相手に精いっぱいのサービスを提供しながらも、その場限りの優しさにどこか満たされない思いを抱いていた加那。それは祖母の介護でも同じで、どれだけ世話をしても翌日には忘れている祖母に、多少の寂しさを感じていたのかもしれません。

しかし、ホストに振られて悪態をつく同僚の姿に、本気の客にリップサービスで対応した自身の姿を重ねたことでしょう。また、「あなたが祖母を忘れていたから、祖母もあなたを忘れてしまったのだ」「どんなに世話をしても家族には勝てない」という家政婦の言葉にも、ハッとさせられたことでしょう。大切なのは、どんなサービスや介護を行ったかではなく、どんな思いで相手と向き合っているかです。

そんな加那に、祖母は人と関わることの大切さ、人に本気で思いを寄せることの尊さを改めて教えてくれたような気がします。加那は、客の体や祖母の体を洗うことを通して、これまでの自分自身を洗っていたのかもしれません。ラストで、散らかった部屋をスッキリと片付けて紀江のもとへと向かう姿が清々しいです。きれいに片付いた部屋は、加那の心の中そのものでしょう。

考えすぎかもしれませんが、ひょっとしたら紀江は、1週間でいなくなる孫娘に気を遣って、毎日忘れたふりをしていたのかもしれません。加那が介護を投げ出したくなっても紀江の存在を負担に感じないように、また紀江自身も寂しい思いをしなくてすむように、あえて情が深まらないようにしていたのかもしれません。

全体的に、認知症介護という重めの内容を軽妙なタッチで描いているのはいいのですが、それでも認知症の描写はちょっと気になります。症状は人それぞれかもしれませんが、紀江の様子が初日とそれ以降で別人のように変わるのですが、実際そんなものなのでしょうか。身近に重度の認知症を患った者がなく、詳細はわかりませんが、なんとなく進行上の都合のいい形で描かれているように見えてしまったのは残念です。

また、認知症をポジティブに捉える同僚の発言で、加那が思い直したように見えたのですが、その理由がイマイチわかりません。ここが加那の転機であっただけに、ちょっとモヤモヤします。モヤモヤついでにもう一つ言うと、紀江のアルバムが途中で途絶えた理由も気になります。夢破れて帰国したにしても、それを口にできない理由はなんなのか知りたかったです。

主演は中尾有伽さんで、自然体の演技がとてもよかったです。共演は研ナオコさんで、セリフは少ないものの、その存在感はさすがです。脇を固めるのは、中川ゆかりさん、西堀文さん、髙木直子さん、赤間麻里子さん、磯西真喜さんら。中でも、髙木直子さんが味のある演技を披露しています。

おじゃる
満塁本塁打さんのコメント
2025年5月7日

深夜のイイねありがとうございました😊気づきをありがとうございます😊
ホストに振られて悪態→表裏一体 本気の客に冷静リップサービス 確かにそうです。
ただ 仕事だと ある程度冷静対応・・・
主人公の転機のモヤモヤ😶‍🌫️アルバム途絶えたモヤモヤ😶‍🌫️お子さまはいるから孫もいるので 夢破れてでしょうかね。
昔から認知症の方いましたが 高齢化で激増なので 確かに 類型化は困難かもです。
敢えて 知らぬふり という貴殿の見解もありかもです。うつ病に詐病が多いように・・・心の中や精神はドクターでもホントは理解不能でしょうからね。勉強になり📚ます。ありがとうございました😊。

満塁本塁打
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