「ドゥニ・メノーシュに会いに行った。」越境者たち 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
ドゥニ・メノーシュに会いに行った。
あの「イングローリアス・バスターズ」以来、映画館でドゥニ・メノーシュに会うことを楽しみにしている。最近では、「苦い涙」や「悪なき殺人」など。
この映画で、まだ若い監督のギョーム・レヌソンが何を描きたかったのかは、インタビューで明確に述べられている。
「孤独な男性が、とあることから難民の女性の越境を助ける」
しかし、なぜ助けるに至ったかが、明確には描かれておらず、ストーリーの展開に、何度も、首をかしげざるを得なかった。作者よ、許せ!
ドゥニの扮したサミュエルは、過失から最愛の妻を死なせてしまい、自分自身も膝に重傷を負い、手術を受けてリハビリ中。そんな身体をおしてまで、雪の中の越境のような膝に最も負担のかかる行動にでた必然性は?
自分自身、生きてゆくことに疲れてしまったことはわかるが、取り扱いが難しくなった年齢とはいえ、愛娘がいる。娘の顔つきからは、奥さんはマグレブ出身だったのか。
フランス側からバスでアルプスを越え、自身の山小屋にちかい、イタリア側の村に行く時、バスの中で、フランス側のコントロールは受けた。しかし、イタリア側では、いくら山中とはいえ、報酬目当ての極右のボランティアだけとは。ありえない。
ひょんなきっかけ(とはいえ、不在宅への侵入)で出会ったアフガン難民のチェレー(ザーラ・アミール・エブラヒメ)と手を取り合うようにして、雪の山を越え、フランス側の休業中らしいリゾートホテルにたどり着く。車に乗せてもらった時、フランス側の臨検はあったが、ドライバーが難民キャンプの人間であれば、ポリスはすぐに気づくはず。
最後のチェレーの決断は、途中で、私が想像した通りだった。
これでは、「辺境で起きたスリラー・サスペンスと少しのバイオレンス」の主人公を難民や移民たちに移しただけになってしまう。人間の描き方に、深みが足りないと思った。「苦い涙」に出てくるような「In my room」のような音楽や、心を震わせるようなダンスも出てこない。
ギョーム・レヌソン監督の次回作に期待したい。頑張れ!