「「徒花でも無駄花ではない」」徒花 ADABANA Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
「徒花でも無駄花ではない」
舞台の対話劇のような演出で進むのかと思えば、極めて映画的なフラッシュバックやオーバーラップ的な編集もあり、また、画面上の光と陰影のコントラストが印象的でもあり、全般的に静かに淡々と進む本作は映像作品としての表現方法を模索している実験作品的な印象が強い。
その上で、労働力としてクローンを作るなら上流階級より労働者階級じゃないのか?みたいな疑問を持った後に、そんな下々の者どもに技術を使うより、影武者のようなものを使ってでも自分自身を「延命」し、自分の影響力を及ぼし続けたいと考えるのが権力者の思考なのかな?とも思い直した。
《あだばな(徒花)》とは『大辞林』の最初の定義によれば、「咲いても実を結ばない花。外見ははなやかでも実質を伴わないもののたとえにもいう。」とのこと。本作では、クローンを人として扱うのか物として扱うのかという倫理的問題は、自らのクローンと対峙した際に、そこに見た目だけではなく「個」としての自分を見出すことができるのか否かという、現実社会では人類がまだ直面していない問題にもぶつかることを示唆している。はたして本当に「実質を伴わない」のであろうか?
「徒花でも無駄花ではない」というセリフが印象的。
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