私にふさわしいホテルのレビュー・感想・評価
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ホテルに泊まるためには、売れる以外の何かが必要な気がしますね
2024.12.27 MOVIX京都
2024年の日本映画(98分、G)
原作は柚木麻子の同名小説(2012年、扶桑社)
大御所に酷評された新人作家の奮起を描いたヒューマンコメディ映画
監督は堤幸彦
脚本は川尻恵太
物語の舞台は、1984年頃の東京都心
そこにある「山の上ホテル」は文豪たちが愛したホテルとして名高く、そこに宿泊して執筆することは作家にとっての夢だった
そんなホテルに自腹で執筆ごっこをする新人作家・加代子(のん)は、相田大樹のペンネームにてプーアール社の新人賞を獲得したが、その際の書評にて、大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)から酷評されてしまっていた
それが原因なのか、数年経っても単行本を出すこともできず、鳴かず飛ばずの中、時間を浪費していた
ある日のこと、山の上ホテルの4階に泊まった加代子のもとに、大学時代の先輩・遠藤(田中圭)がやってきた
彼は因縁の大作家・東十条の担当者で、今晩はこの上の階に詰めていると言う
明日の朝までに原稿が上がらないと「飛んでしまう」のだが、それをさせないためにこの場所に足を運んでいたとも言う
その後、遠藤からルームサービスを受け取った加代子は、あろうことかホテルのサービスマンになりすましてルームサービスをごり押しして、東十条の部屋へと入ってしまう
そこで面白おかしい話をして時間を削り、それによって彼の原稿は「飛んで」しまった
そして、その穴埋めに加代子の短編が掲載されることになったのである
その後は、一連の騒動が相田大樹と遠藤が仕掛けたものだと思い込む東十条が激昂し、プーアール社にて連載を始めて、加代子の妨害をさらに強める様子が描かれる
プーアール社の新人賞を獲ったゆえに他の出版社からデビューをすることができず、さらにプーアール社すらも東十条の言いなりになってしまう状況になっていた
そこで加代子と遠藤は、ペンネームを「有森樹李」と変えて、新しい作家として文鋭社の新人賞に挑戦することになった
作戦は成功し、ようやくデビューへの道が開けると思ったものの、同時期に同名の天才・有森光来(服部樹咲)が現れ、またもや重箱の隅に追いやられてしまうのである
映画は、ホテルに固執する加代子を描いているものの、内容は「VS東十条」の舌戦が繰り広げられるだけとなっている
東十条が加代子を文壇から突き落とそうとする理由はほとんど描かれず、ここまで固執すると「自分の立場が危うい」とでも思ったのかと勘繰ってしまう
だが、すでに地位を築いている東十条がぽっと出の新人作家を潰す理由は乏しく、逆恨みから騒動に巻き込まれ、さらに深追いしてしまっただけのように思える
書評というのは専門家の書評もさる事ながら読者評も大事なもので、彼女の作品は読者の支持は得られていると思う
なので、プーアール社が頑なに出版しない理由づけが必要で、そういった干されている場面をもう少し描いても良かったように思えた
因果を考えれば、東十条の酷評作家を売り出すわけにはいかないという謎のプレッシャーがあるのかもしれないが、リアリティ皆無でも、そのあたりをきちんと描いて、加代子の憎悪をもっと膨らませたほうが丁寧だったかもしれません
いずれにせよ、キャストの演技を観る映画で、そこがハマらないとキツい内容のように思えた
物語は、新人作家を潰そうとする大御所というあり得そうで無さそうな設定で、もう少し東十条が加代子に対して脅威を持っているなどの理由づけが欲しい気もする
世代が違うので作品の良さがわからないというのは理解できるので、作品に対する酷評についての論争があるとか、二人の作家としてのガチの諍いが見たかったように思えた
加代子語録が誕生するぐらい言葉には力があると思うので、それを受けて立つ大御所ぐらいの貫禄があって、その鼻っ柱をポッキリと折るぐらいの結末があったほうがスッキリしたのかな、と思った
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