私にふさわしいホテルのレビュー・感想・評価
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あり得なさそうなキャラクターに説得力を持たせる稀有な女優、のん
のんの2020年の主演作「私をくいとめて」のレビューで「のんはどんな役にでもなりきる器用な演者ではない。(中略)容姿と表情と声から醸すナチュラルで柔らかな魅力を備えつつ、表現する行為を常に模索している求道者のストイックさも感じさせ」と書いたが、2022年の「さかなのこ」、今年の「私にふさわしいホテル」と観てきてもその印象は変わらない。特に今作では、文壇を舞台に奇想天外の反則技を次々に繰り出し大物作家へのリベンジと返り咲きを狙う若手女性作家・加代子を熱演したことで、およそリアリティーのないキャラクターに説得力を持たせることができる、稀有で貴重な才能を持った女優との思いを強くした。
加代子が売れていない状況からのし上がるために敢行する作戦の数々は、冷めた目で見れば非常識でフェアでないことばかりだが、大人向けの寓話、業界をさらりと風刺する笑いを優先した喜劇と割り切れば心穏やかに楽しめる。「BISHU 世界でいちばん優しい服」での主演が記憶に新しい服部樹咲が演じた天才女子高生作家が、なにやら割を食ったような感じでフェードアウトしてしまうのは少々気の毒だったが。
せっかく作家が主人公なのだから、小説を書くことの楽しさ、面白さが、創作される小説世界の魅力とあわせて表現できていたらもっとよかったのに、と惜しまれる。
爆笑の中に古き良き文学界へのアンセムが
新人賞を受賞して輝く作家人生に歩み出すはずが、彼女の作品を酷評した大物作家のせいで新作の発刊すらままならないヒロインの、なんとも救われないリベンジマッチ。
大物作家の執筆活動から私生活まで、ことごとく邪魔しにかかる主人公を演じるのんの100%フルスロットル演技と、それを受けたりかわしたりしながら随所で笑いを取っていく大物作家役の滝藤賢一が抜群のケミストリーを醸し出し、時折涙が出るほど笑ってしまう。このノリはいつか観たハリウッドコメディに近いかもしれない。主人公の編集者を演じる田中圭のいかにもサラリーマン編集者っぽい雰囲気や、大物作家の妻に扮する若村麻由美の"間を外さない"コメディリリーフぶりにも感心する。
舞台は今年2月に全面休館となった神田駿河台の山の上ホテル。歴代の有名作家たちが定宿にしていた伝説のホテルで展開する爆笑コメディの隙間から見えてくるのは、今は希薄になった古き良き文学界へのアンセムだ。年の瀬に大笑いしたい人向き。
しっかり笑えるコント
のんさんと滝藤賢一さんのワチャワチャは嫌いじゃない。敵が味方になったり、味方に復讐したり、二転三転する展開も良い。本作がコントなら、尺は若干長すぎるけど、結構笑わされたので高評価。
ただ、映画として評価せよと言われたら、滝藤さんのウィッグが不自然な時点で、高い点は付け難い。終盤の尻すぼみも気になる。とは言え、のんさんと滝藤賢一さんのはっちゃけ感は楽しかったので、「TRICK」のような笑いに振り切った新作がつくられば観てみたい。
何度も吹き出して笑った、笑った
そもそも、2024年2月14日現在(スマホがある時代)と1980年代(固定電話のみの時代)との二重構造のストーリーが面白いです。映画コムのあらすじ紹介にも、なぜか書かれてはいません。
主人公(のん)の絶叫芝居(定番でしょうか?)と上品そうに振る舞うお芝居(八変化で現れます。)とのギャップが楽しいです。相変わらず、のんの滑舌がはっきりしないですが、それも独自の魅力です。
東十条(滝藤賢一)が作品を批評しただけで悪いことしてないのに主人公が逆恨みしているところが痛い、などというレビューもありますが、大体、度重なる東十条に対する嫌がらせは、主人公の言動を子細に見ると、真のリベンジなのかは疑問があります。何より、東十条は、喜んでいたし、結果として執筆に打ち込むことになり、Win-Winになっています。
笑い通しの、爽やかなコメディでした。のんは稀有の役者、偉大なり。
のん の大冒険。 「主人公は私よ」って。 この自分ファーストは、やっば若い人には必要なんだろうな。
「私にふさわしいホテル」
これ、なんと厚かましくて、傍若無人なタイトルだろうかね(笑)
それも「駆け出しの、実力不足の私ですからビジホで十分なんです」と言わずに「山の上ホテル」を自分におごるという彼女なのですから。
文壇と出版業界に私こそが下剋上をもたらしてやろうじゃないかって話なのだそうだ。
我が社でも、
のんと同世代の三十代の部下たちの、あの不躾さと甘ったれぶりには、僕はほとほと苦しんでいるんですがね。
「きりんさんにキツめに注意されたので辞めます」
「きりんさんみたいな怖い人とは仕事出来ません」
「なんで挨拶なんかしなくちゃならないんですか?」
これ、新人たちから何回言われ、会社にチクられたことか。
彼らは「ありがとう」が言えない。「ごめんなさい」も絶対に言わない。
すなわち、自分を《○○賞受賞待遇》とか《山の上ホテル待遇》しない大人たちに対して、最近の若い人たちって、マジ突然牙をむくのですよ。
だから
彼らを拗らせないように、腫れ物に触るように先輩・上司たちは気を使うんです。
まあ、この映画は他人の物語だから、耐えられたし、笑えましたけども。
ストーリー的には、
批評家東十条の“下げコメント”のせいで、デビューの出鼻をくじかれてしまった新人類の作家=加代子が、自分可愛さゆえに憤慨し、大御所の選評作家にあの手この手と執拗に妨害を加え、報復遂行するという業界コメディだ。
で、仇討ちが忙しいから、本務の執筆はそっちのけかよーという展開。
とにかく小ネタの連発と、アップ顔なら任せとけの のんの顔芸で、終始可笑しくて一気に見せてはくれましたが。
( しかし、作家たちの日常を想うのだが、怒りや悔しさからモチベーションの力を得て、新作のための新しい文章って果たして生まれてくるものなのだろうか?
たっぷりの時間と、余裕。そして穏やかな気分からのみ、みずみずしい言霊は現れて来てはくれないものだと思っていた )。
彼らは
書けなくても書く。
籠もってでも書いてひねり出す。
嫌でもペンを持ち自己鍛錬を続ける。
そして編集者の叱咤と、自分を追い込む強迫観念。この闘魂が次作を生み出す原動力になるって、
・・この文壇の人々の実情。これって最早 筋肉アスリートたちの世界ではないだろうか。
「締め切りの苦しみ」や「ネタ集め」。そして語呂サイコーの「文豪コール」には吹き出してしまったが、きっと共感してくれた世の作家さんたちは沢山おられたのではないかな。
・ ・
最近非常によくある凶悪犯罪=自己承認欲求形の若者たちが
・すぐに傷ついちゃって、
・相手に対しては逆恨みをし、
「2作目を書かずに」
・たちどころに刃物やらガソリンやらを持ち出して、“敵”を刺し、放火し、自分を持ち上げずにコケにしてくれた相手を亡きものにしてしまう、
あの幼稚な、短絡的な犯行。
― のんの場合そういう展開にはならなくて良かったのだが、
しかし本作だって、コンセプトとしてはギリギリのすれすれなんだから
ギャグ映画としては僕はホントは思いっきり笑いたかったけれど
ふと類似する上記のような凄惨なストーリーを僕は想起してしまって、薄ら寒く、苦いものが少し残ってしまったんです。
これ、
「京アニの (自称作家による腹いせ放火事件) 」とか、現実社会では「勝手な思い込みの報復殺人事件」が多発しているこの世の中だからです。
あと「ここはアウシュビッツか!」は不用意だし、要らない台詞。
「言われなくても書きますから💢」と再びペンを取り、原稿用紙に向かい直す のんは、まぁ健康なほうだ。
健康で良かった。
結論としては、
どんなに貶されて凹んでも、最後には原稿用紙に向かった 甘ちゃんの のん嬢を僕は許してやろうかと思うし、褒めてもやろう。
・ ・
のんの普段着の野暮ったいファッションと、受賞スピーチの時の出で立ちとの落差には目を見張ったし、
銀座のママ=田中みな実の着物も、そして東十条の妻千恵子 (若村麻由美)の芝翫茶の色無地、そしてラストの鮮やかな緑 (千歳緑?) の着物。あれは美しくて唸った。
つまり、
のんの騒がしい喋べくりを、田中みな実と若村麻由美の穏やかな話言葉がしっとりと中和してくれるのだ。
よい先輩役者や、優れた衣装さんあってこその のんの出番なのだ。
そして話の舞台が落ち着いた山の上ホテルであるからこそ許されるドタバタ劇の収束だったかも知れない。
それら厚いバック態勢の支え無しには、のんはドラマ俳優としてはまだ独りでは主役を張れないんじゃないかなーと
ちょっと思った。
今後、別のイメージでの新境地へと脱皮できるか、だ。
でもそれらをすべて含めても、可笑しくってねぇ、ゲラゲラ笑いながら観てしまいましたよ。
のんが大好きです
「あまちゃん」は唯一ちゃんと観続けた朝ドラである。その頃、私は単身赴任でマレーシアに住んでいたが、時差の関係でNHKは1時間遅れで見ていた(つまり出勤前に見れるという事)。日本人はだいたい同じ習慣だったので毎日の会話は「今日のあまちゃんだけど」で始まっていた。なので最終回の後の「あまちゃんロス」はしばらく続いたものでした。
のん(能年玲奈)はその頃から自分の娘みたいに思ってたので、ちょっとやさぐれた性格が悪い今回の映画の役では、何をやるにしても温かい心持ちで応援しながら、ニヤニヤして見ていました。
昭和のまだワープロもパソコンもない頃、作家が山の上ホテルのお決まりの部屋で缶詰になり万年筆で原稿用紙に小説を書き、編集者からの差し入れの千疋屋のフルーツサンドを食べる。
銀座のクラブやら文壇バーでウイスキーを飲み悦に浸る。売れっ子作家がもてはやされ華やかだった出版業界が存在していた時代。今も物語の書き手は沢山いるけど、この業界の世界は全く違ってるんだろうなぁと思います。
原作は読んでいないが、柚木麻子が作家になったばかりの頃、映画の加代子(のん)と同じようにデビューしても単行本を出させてもらえない鬱憤で書いたそうでうですが、よくぞこんな、はちゃめちゃな文壇内幕物語を作ってくれたもんだと感謝します。そしてそれを堤幸彦監督が楽しいドラマとして映像にしてもらいました。ありがとうございます、。
そして柚木麻子原作の次回作は、なんとこの映画で書店員役をやった橋本愛が主役でなんと!のんが有森樹季役で共演とのこと。2作続けて「あまちゃんコンビ」が見れるなんて、なんて素敵なことでしょう。とっても楽しみにしています〜
あれれ、おもしろい
悲しいかな上映館少ないですねぇ。
かなりの良作だと思います。
良くできたお話です。
とっても良くできたお話なんですよ。
きっと予算がそんなに
なかったのでしょうかねぇ~
だからコメディタッチにするしか
なかったのかなぁ・・・?
(いやいや、山の上ホテルで撮影できてる
ことだけでも、すごい贅沢かもしれん・・・)
書きようによってはサスペンス、推理タッチも
盛り込めたかもしれません。ふくらませようと
思えばいくらでもできたよういな気がします。
それほどに面白いお話なんですよ。
今作のMVPは滝藤さんでしょうね。
滝藤さんがいてくれてよかったぁって
感じです。
能年さん・・・残念ながら「女優」として
踏んでいる場数が少なすぎる気がします。
ですから引き出しが少なくって、あれ?こんな
キャラ前も見た気がするなぁ~・・・な既視感に
襲われちゃうんですよね。(キ〇タク状態)
モデル業は安定的にやってらっしゃるので
ビジュアル変わるときはさすが!って感じ
なんですけど・・・。
高石あかりさん主演でみてみたいかなぁ~。
でも、面白かったですよ!
のんちゃん
のんちゃん!フルスイングを!
山の上ホテルって実在するんだ!
完全にハイテンションなのん、ミドルテンションの滝藤賢一、ローテーションの田中圭の3人の映画。
その他豪華な脇役陣は完全引き立て役!贅沢な使い方!!
ストーリーは面白かった☺何度も地味に吹き出しちゃうような笑い箇所があったり、ニヤニヤしちゃったり。
滝藤賢一って結構苦手な俳優さんなんだけど、ミドルテンションくらいだったら自分的に大丈夫だと判明。のんは初見。うるさいのかな?と心配したけど、想像していた通りのキャラでした。田中圭は情けない男性役を最近よく見ていたから、ドンと構える編集さんとかいいんぢゃない??
山の上ホテルって実在するんだ!しかも作中で言ってた通り神保町に!!そして本当に文豪たちに愛されてたんだ!!!(老朽化に伴い2024年2月からは休館中。そして土地建物の権利は明治大学が保有←すごっ)昔あったホテル西洋銀座を思い出したなー。古き良きホテルは取り壊さず是非とも残して欲しい。
映画予約しておいて助かった……
直前に試写会で観た某映画が個人的に酷いと感じたから、こっちが余計に面白く感じられて評価はちょっと甘めかも。
創作と現実と。
バットは振り切る!
経済アナリストの森永卓郎さんが日頃からラジオで発言している「バットは振り切れ!」、まさに本作ののんさん、見事に振り切った演技だと感じました。
いつもながらの、どこから見ても「のん」ではあるのですが、実年齢とほぼ同じ主人公を等身大でやり切る姿に清々しさを覚え、荒唐無稽に感じられるストーリーでありながら、最後までしっかりと観ることができました。
そういう彼女だからこそ、色々あったにせよ起用してみたい、一緒に作品を創りたいと思う人が次々と現れるのかなぁ、などとも思ったりして。
そして、ストーリーの重要な部分を占める舞台として、閉館してしまった「山の上ホテル」が登場し、若かった頃の自分を重ね合わせて感慨深くもあり、作品も場所もどちらも楽しめた良作でした。
悔しさがある限り
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