「あえて作家論として見ると」私にふさわしいホテル かみさんの映画レビュー(感想・評価)
あえて作家論として見ると
のんさんを見ていたい気持ちには十分応える映画だった。お話として納得し切れないのに、引きずりこんで見せる勢いは素晴らしい。
落ち着いて作家論としてみれば、新人が2作目を生み出すことの苦しみとか、ベテランが書き続けることのモチベーションが他者へのやっかみであることなど、掘り下げると面白いテーマがいくつかあった。
書きたいという純粋な気持ちより、怒りが作家を動かすというのは真理かもしれない。
その割に最後はベテランがデビュー作と同じ気持ちで執筆に臨むのがよしとされるのはそれでよいのか。途中に出てくるイノセントな高校生作家は邪念が無いので書けなくなってしまったのか。もう少し説明が欲しい。
編集者は作家と同じところまで落ちてこいと煽られてましたが、受賞スピーチでのんさんに感謝されるようなことを何かしましたっけ。
以上のような面での納得感は誰も求めない映画だと思うが、画面から伝わるのんさんの怒りには本物感があるので、もう少し何らかのメッセージがあれば余韻が残る映画になったのではないか。
「言われなくたって、書きますよ」
sow_miyaさん、ありがとうございました。
デビュー作と同じ気持ちを、単に初心に返るのではなく、高めのハードルを乗り越えた先の境地ととらえると、映画のラストも味わいが深まりますね。
それまでの経験を踏まえながら何度目かの初心に到達するというのは、最初の初心以上に難しいことでしょう。この映画の隠れたテーマかもしれません。
フォローありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
自分は物書きではありませんが、絵を描きます。初期衝動のままに描いた作品が、展覧会に初出品で初受賞みたいなことがあると、自分で意識できていない分、どこが評価されたのか、これからどうすればいいのかわからなくなるという高校生作家の気持ちはよくわかりますし、多分、東十条も、どうしてもセルフコピーみたいな部分が生じているのではないかと想像します。なので、デビュー作と同じ気持ちになれるというのは、自分の実感とすると、結構高めのハードルを乗り越えた先の姿のように感じられましたが、確かに、作者の柚木さんは、どんな思いを込めたのか、聞いてみたいところですね。