「文壇の大御所ベテラン作家とデビュー作以降は鳴かず飛ばずの新人作家。妙な接点から始まる二人の作家の人生模様を、暖かくもコミカルに描いた人間ドラマです。」私にふさわしいホテル もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
文壇の大御所ベテラン作家とデビュー作以降は鳴かず飛ばずの新人作家。妙な接点から始まる二人の作家の人生模様を、暖かくもコミカルに描いた人間ドラマです。
主演がのんということで、今年の初鑑賞はこの作品かな? と
思ってました。「山の上ホテル」にも興味があったので、それ
も後押しして鑑賞してきました。・_・☆
作家二人(新人作家♀とベテラン作家♂)+編集者♂一人。
中心となる登場人物は、3人と言って良いかも です。・_・
その3名とは
★新人作家♀ = のん こじらせ作家を好演。…怪演?
★ベテラン作家♂ = 滝藤賢一 出版界への影響力が大なヒト。
★編集者♂ = 田中圭 文芸誌の編集者。能力はあるが…
新人賞を取ったものの、そのデビュー作を散々にこき下ろされ
それ以来鳴かず飛ばずの若手女流小説家を演じたのが「のん」。
自分を貶した作家への「復讐心?」に燃える女。 …こわー @_@
人気作家の「缶詰」気分を味わうため、自腹で山の上ホテルに
泊まっていたところに、大学時代の先輩が乱入してきた。
ロビーでたまたま見かけたと言うのだが、山の上ホテルに来た本来
の訪問先は、スイートルームに宿泊中のベテラン作家♂。
創刊50周年を迎えた文芸誌に、50名の作家の小説を載せる企画
の目玉となる小説を執筆中だ …と口にする編集者♂。
どうやら原稿の締切りギリギリらしく、落とされたらマズい、とも。
それを聞き悪いコトを思いつく新人作家♀。 目がキラリ。
” 万が一原稿が落ちたら、代わりが必要ですよね ”
かくして、原稿執筆を邪魔してやれ大作戦が始まった。
ベテラン作家♂ は、無事に原稿を書き上げられるのか?
新人作家♀は、見事に本懐(?)を遂げられるのか?
というお話。…かと思って観ていたのですが…。
それはこのお話の、冒頭のエピソードでした ・△・ あら
無事(?)原稿を落とすベテラン作家先生。 激怒。
代わりに新人作家♀原稿が掲載されることに。 やったネ
怒り心頭のベテラン作家。
” …この代わりの原稿の作者、邪魔したアイツだ! ”
その後も、名を変え作家家業にいそしむ「のん」。
単行本を出版する話がベテラン作家の横やりで潰されたり
候補に上がった文芸賞審査員にベテラン作家♂が居たりと
熱く、時にはコソクな手段でバトルが繰り広げられる訳で
何ともコミカルな雰囲気のストーリーでした。
のん観たさの鑑賞だったので、その点でまず満足したのですが
物語としてしっかりした作品だったので、なお満足です。・_・v
観て良かった。
※パンフレット売り切れで買えなかったコトだけ残念。むう。
◇
全体振り返ってみると、のんの面目躍如な作品。でしょうか。
くすっと笑ってしまう軽妙な会話が全体を通して散りばめられていま
すが、ベテラン作家と新人作家の関係性が次第に変化していく様子の
描写がなんとも言えぬ味わいで、良かったです。
一筋縄では行かないこじらせ女を演じたら、のんはやはり素晴らしい
そう改めて感じた作品です。
それにしても冒頭からラストまで、いったい何年経過したのでしょう?
◇あれこれ
■正体(…というか複数のPNの由来)
作中では、のんの名前が(ペンネーム)がころころ変わります。
中島加代子、相田大樹、白鳥氷、有森樹李… @△@;
(覚えきれませんでした。↑は、このサイトの紹介文より抜粋)
ペンネームの由来それぞれ何かあるのかな? と思案中。?-?
※白鳥氷は分かります。なんと氷の彫刻から…って あれ)
それにしても、デビュー直後から名前を変え続けるのって、
作者にとってデメリットにしかならないような気がします。
※どう考えても、名前を覚えてもらえないデス…
複数のPNを使い分けた現実の作家さんというと
栗本薫さん(あるときは中島梓さん)くらいしか思い浮かびませんが
他にもいるのでしょうか? はて
■ダサい装丁
のんが何度もこき下ろした「本の装丁」。もしかしたら
「カリスマ書店員(橋本愛)が装丁デザイン者」??
と、ハラハラしながら行方を見守ってしまいました。
装丁や表紙イラストで ” この作家はこれでしょ ”
というイメージが定着するケースもあると思うのですが、作家側から
「この人に依頼したい」という要望は出せないのかな? とも。。
…はっ もしや のんが自分でデザインしたのか? (自虐)
■虚構と現実
現実世界と非現実世界。
その境界の上をフラフラと歩いているような、一種の危うさを感じ
させるストーリー構成だったような気もしています。
あれだけ同じカオの女性が登場しても「他人です」と言われると
「そうなのかぁ?」と納得(?)する東十条先生。大物です。
ギリギリの範囲内で、現実世界の話に踏みとどまる、絶妙なバラ
ンス感覚を感じました。こういうのも、悪くないです。
■選ぶか選ばないか。それが問題だ
東十条センセイ。文芸賞の選考委員として誰の小説を推すのかな? と、
話の行方を見守ったのですが
「審査会の会場に現れない」
という選択肢でした。
それがありましたか…。なるほど。
ワザとか、もしくは創作意欲に火がついて、本気で審査会のコトを
忘れてしまったか。 うん。東十条先生。大物です。
■レッテル貼り
見つけた素材にレッテルを貼る。そのことの功罪にも触れていました。
” イノセントな才能 ”
” 君ならできる ”
” 絶対に書ける ”
そう言われれば言われるほど、期待に応えられない無力感を感じてし
まうタイプの人って、確かに居ると思います。
あの新人高校生作家が、いずれまた小説を書く日がくればいいなぁ。
■本は凶器(…狂気?)
逃げる万引き犯に向かって本を投げつけるのん
ハードカバーの本って、カドの部分が当たると痛そう…
さらに、本が当たって倒れた相手へのマウント&ラッシュ。おお
過剰防衛(?)で訴えられないと良いのですが… ・△・;
◇最後に
わざとらしい設定の場面で、芝居がかったセリフを口にする。
それでも白々しくならないタイプの役者がいると思います。
この作品の主役は「のん」ならばこそ、と感じました。
やはり「のん」は、希有な才能の女優さんです。・_・
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
共感&コメントありがとうございます。
原作は読んでないのですが、中島加代子の生活の部分はほとんど描かれてなかった気がします。常に何かを演じている・・演出なんですかね?