劇場公開日 2024年12月30日

「仕入れ、いのち。」グランメゾン・パリ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0仕入れ、いのち。

2025年1月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

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幸せ

毎度の如くドラマ未鑑賞。
キムタクは何をやってもキムタク過ぎるから全然好きじゃないんだけど、今回はすごく良かった。あの鼻につく上から目線の演技を上手いことキャラに反映させており、ストーリーもそんな主人公を最大限生かしたものになっているから結構見入っちゃう。
東京ではどんなことがあったのか、誰とどう関わっていたのか等のドラマで描かれた部分はお触り程度であるため、見ていた方が楽しめるのは間違いだろうけど、初見でもなんら問題なし。ドラマの劇場版としてはかなりよくできていると思う。

IMAXである必要は全くなかったけど、舞台がパリというのもあって全編通して息を飲むほど上品だから、映画館の大スクリーンで見る価値は大いにあると思う。しかも映像だけでなく、ストーリーも高貴な雰囲気を常に纏わせていて、映画そのものがフランス料理のようだった。
映像はとにかく美しいし、フランス語が多く飛び交うもんだから、とても日本映画を見ているようには思えない。なんだか凄く贅沢な気分。こんないい意味で邦画らしかぬ演出ができる人って一体誰なんだろうとエンドロールを眺めていると、まさかの塚原あゆ子。びっくりしたけど大納得。脚本も黒岩勉ですもんね。どうりで質が高いわけだ。

料理には多少関心があるものの、フランス料理とはこれっぽちも縁がないもんだから、料理名だとか調理法だとかの知識は一切なかったんだけど、そんな自分でも大満足できるほど、フランス料理どころか料理そのものの魅力が詰まった作品だった。あんまりレストラン系(?)映画って作られないから、比較対象は数年前の「ザ・メニュー」だったんだけど、あの作品と同じくらいきちんとした作り込みで、めちゃくちゃワクワクしてしまった。
ネタバレは避けるとして、ラストのフルコースのシーンにおける冨永愛の心の声解説がすごく上手い作りしているなと感じた。素材を見極め、料理を追求することの面白さ。食はこんなにも人を楽しませてくれるのか。食欲というよりも創作意欲の方が高まってしまった。

2時間に収めなきゃいけないからかなり駆け足な箇所はあるし、ご都合主義な展開も正直否めないけど、大筋がブレることは一切なく、一貫して三ツ星を目指す物語だったため、最後まで安心して見届けることが出来た。ありがちだけど不覚にも感動させられてしまうし。
ただ、登場キャラに関してほとんど掘り下げがなかったのは寂しい。この辺はドラマではもっとしっかりとしたバックボーンがあるのだろうけど、映画である本作は主人公、パティシエ、倫子さんの話ばかり。ミッチー演じる相沢は影ではかなり活躍していたろうに、ほとんど登場せず、3人に食われてしまっていたから残念。まぁみんな満遍なく、そしてエピソードもその人に合わせて書くなんて至難の業ですからね。

にしても、普段から高貴な暮らしを心がけようとか、心に余裕を持っていきたいなとか、更には料理についてもっと知りたいなとか、かなり私生活に影響を与えてしまうほど、インパクト大のすごくいい映画だった。大袈裟のようだけど、本当に見える世界が変わる。
料理に国境はない。「SHOGUN将軍」でゴールデングローブ賞を獲得した真田広之のインタビューを聞くと、なんだか似たものを感じた。日本のものが愛されるって心から嬉しいねぇ。セパティ!

サプライズ