「「最悪」コンビの最終作…だが…」ヴェノム ザ・ラストダンス しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0「最悪」コンビの最終作…だが…

2024年11月15日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

初めに断っておくが私はマーベルファンでありヴェノムファンでもある。「ヴェノム」シリーズは全て劇場で鑑賞してきた。その上で、飽くまでも個人的に少々厳しめの評価をさせて頂く。
1作目であえてスパイダーマンの縛りを外してヴェノムのオリジンを描き、2作目では原作でも人気のヴィラン・カーネイジとの対決。それらを経た3作目。追われる身となったエディとヴェノムの、最後の旅路が描かれる。

CGのクオリティは流石の大手ソニー・ピクチャーズ、素晴らしい。一時的にヴェノムが動物に寄生するアイデアなどは面白い。役者も頑張っている。しかしそれ以外はマーベルファンとしても映画好きとしても、「なぜそうした?」と首を傾げたくなる点ばかりだった。
まずストーリー構成や展開が非常に雑だ。
ヌルだのエリア51だのの後付け設定は、1作目におけるヴィラン、ライオットの「シンビオートの隊長で、地球を侵略しにやって来た」という設定との整合性が取れていない。それを解消するロジックを出す事も出来なくは無いものの、初見の印象としては突っ込まずには居られない。
映画単体として見ても前作までの主要キャラはチェンさんとマリガンを除けば全くと言っていいほど登場せず、代わりに捩じ込まれた大量の新キャラによる、思い入れも無ければ感情移入もしづらいドラマが映画の三分の一程度を占める。
敵のチョイスも良くない。今作でメインを張る相手は、シンビオートの創造主ヌルの手先・ゼノファージ。これが強すぎる上、軍の特殊部隊までもが2人を襲う。2人の抱えている事情もありまともに戦う事すら出来ず逃走するシーンが多い。「格上の強敵に死力を尽くして立ち向かう」というこれまでのヴェノムシリーズの醍醐味があまり感じられなかった。
ファンから「きっと次の相手だろう」と期待を寄せられていた、マリガンが変身する共生体「トキシン」だが、あれをトキシンと呼んで良いかも怪しい上にマリガンの扱いが異常に雑だったのがあまりにも勿体ない。

これらの要素がノイズになってしまった為に、心打たれるはずのラストの展開にイマイチ乗り切れず。さらにしんみりとした終わり方にも関わらずクレジットのバックの音楽はゴリゴリのロックやラップ、期待とは裏腹にほぼ全く無かったクロスオーバー、考察する気も起きないポストクレジットシーン等、最後の最後まで残念な印象の3作目であった。監督の交代、MCU合流の兼ね合いなど様々な制作上の事情は考えられるが、それでも「もう少しどうにかならなかったのか」という気持ちが拭えない。

途中に挟まるギャグシーンの比率が前作から更に増している事もあり、1作目が一番好きな私にとっては解釈不一致な印象もあった。ダークだがどこか愛らしい、絶妙な塩梅が魅力的だったヴェノムは、もう見ることは叶わないのだろうか。
今後のMCUへの合流に期待したい。

しゅわとろん