「全シンビオート解放」ヴェノム ザ・ラストダンス 𝐵𝐴𝑈𝑀さんの映画レビュー(感想・評価)
全シンビオート解放
シンビオートの創造主である虚構の神ヌルが幽閉された自らを解放できる”コーデックス(別個体同士の合体)”を奪うためエディとヴェノムの行方にせまる。全シンビオート解放。「”さよならは別れじゃない”」。その台詞をあのキャラが発するのは、流石に泣かされる。シリーズ第三弾でまさかの涙腺崩壊級のストーリー(ラストダンス)だとは思いもよらず鑑賞後はかなりの余韻に打ちひしがれた。と、感傷に染みたことはさて置き、時系列としては『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(‘22)』後のバーカウンターのシーンからマルチバースを笑いのタネにしてスタートしたり『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(‘21)のカーネイジとの”大聖堂の事件”を思い起こさせるフレーズなり、作品間での状況が地続きで続いて我々側もそれに呼び戻される感じは繋ぎ止めとして良かった。また鑑賞前は今回の第三弾ではマーベルコミックスでも名高い宇宙規模の超凶悪ヴィランとなるヌルとヴェノムの頂上決戦が大規模スケールで描かれるのかと思いきや…の超変化球。ココの肩透かし感はあえての次作以降のフック的役割なのかかなり残念。ゼノファージ戦だけであれだけの尺を埋めるのは正気の沙汰か?、と思ってしまった。後半ほぼ銃撃戦やシンビオート同士のミリタリームービー。全体的にエディとヴェノムのゴージャスなベガスの夜へ向けたロードムービーあるいは有終ならぬ友情の美をケリー・マーセル監督は109分かけてやりたかったのか、と勘繰ってしまう。もちろん109分の中でもエモーショナルな台詞、シーン、メッセージ性がないわけじゃない。が、三部作の第三弾でこのシナリオにあえて決めた意図がどうしても汲み取れない。おそらく満場一致でヴェノムとあいつの正面突破からの激突シーンを皆も観たかったはず!ポスクレの示唆やエディの苦い表情からもコレでシリーズが終了とは思えず、もちろんヴェノム単体の第四弾で『アベンジャーズ/エンドゲーム』(‘19)ばりの逆張りを期待してしまう。これまでの同族対同族から脱したヌルという特異の素材を活かし切れず…何しとんねん。ただやはりわたしは、シリーズではカーネイジと激突した二作目が一番大すきでした。