「彼のダンスが語りかける」コール・ミー・ダンサー レントさんの映画レビュー(感想・評価)
彼のダンスが語りかける
主人公のマニーシュは天才である。何の天才かといえば努力の天才。そして彼をそこまで努力させたのはダンスがただ純粋に好きだということ。まさに好きこそものの上手なれである。
ダンススクールで彼はユダヤ人のイエフダのもと同じく才能を見出された年下のアミールと共にバレエのレッスンを受ける。
天性の才能を持つアミール、しかしマニーシュは努力で彼に追いつく。共に甲乙つけがたい才能の持ち主でありイエフダは彼らへの指導に熱中した。
やがてアミールはイギリスの権威あるバレエ団に入ることとなる。しかし、マニーシュはバレエを始めたのが遅すぎた。いくら才能があって努力しても年齢にだけは勝てなかった。
それでもマニーシュはダンスへの情熱を失うことはなかった。イエフダも溺愛する舎弟のために彼の行くべき道を模索した。
同じく彼の才能に目を止めた支援者によりマニーシュはペリダンスに入団する。彼は今もそこでダンスを続けている。
ダンスには人種や宗教の違いなど関係がないとマニーシュは言う。そしてただ踊ることに魅入られたマニーシュはダンスの種類にもこだわらない。彼のダンスへの興味はブレイキンからクラシックバレエ、そしてコンテンポラリーダンスへと様変わりする。どんなダンスであろうともそのかける情熱は変わらない。彼にとってはまるで踊ることが生きる証であるかのよう。
彼は言葉ではなく踊ることで自己表現をする。彼は踊りで人々に語りかける、踊る自分を見てほしい、これが僕なんだと。けして僕を曲芸師とは呼ばさない、ダンサーと呼んでくれという彼の声がそのダンスを通して聞こえてくるようであった。
言葉ではなく踊ることで自分を表現するダンサー。確かに彼らには言葉はいらない。ダンスという好きなものにたずさわるもの同士には肌の色の違いや思想などの違いも関係がない。ダンスだけで人は繋がれる。イエフダとマニーシュは今も家族同然の付き合いだし、マニーシュのいる劇団も様々な人種で溢れかえっている。
ダンスこそあらゆる社会の垣根を飛び越えて人々を一つにできる可能性があるのだと感じさせてくれる。
唯一飛び越えることができないと思われた年齢の壁、それさえもマニーシュは華麗なジャンプで飛び越えてくれると信じたい。でもイケメンだからインド映画で踊る彼の姿を見たい気もする。