「曲とダンスで一対」ボレロ 永遠の旋律 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
曲とダンスで一対
映画館に着いたら目当ての映画は上映なく、この映画が入っていました。
違う週のタイムテーブルをみていたらしい。。でもせっかくなので、コレを観ました。
ラベルはモテる男だったんですね、まあ二枚目で芸術家にしてはそこそこ常識的、暴君でも暴力的でも目立った奇行があるわけでもなく(あくまでも映画では)円熟した女性に好まれるタイプだと思いました。
スランプからのボレロを生み出すまでの苦悩と、生んだあとの苦悩がたっぷり描かれて長かったです。
「ボレロ」は機械の音や、流行歌を取り入れたものだったのか。
モーリスの新曲を酷評した批評家が、「君の音楽には情感がない(それがプッチーニとの違い)」と言っていたが、ボレロはそれを逆手に取ったような楽曲だと思う。同じテンポで粛々と曲が流れる。同じテンポの同じ曲が繰り返され後半に向かって盛り上がり最後に大爆発するのにゾクゾクする。無機質なのになぜかエロい。無機質はおそらく意識したんでしょうが、エロいのは作曲した御本人は気づいてなかったんですね。
自分、音楽に(バレエにも)詳しくないのでシロウトが感じた思った、というだけのことですが。
ダンス用に作曲されたものなので、ダンスと一対になったところで本領を発揮するのだと痛感した。イダのダンスの振付師は曲のエロいところだけ汲み取ったよう、あれは下品すぎる。優雅さよりキレの良さが曲に合う気がするが、動作が緩くて歯がゆい。苦しんで生み出したモーリスにすれば曲への冒涜以外のなにものでもないだろうし、演奏自体も彼の意図するものと違っている、それなのに大ヒットとは作曲家としては複雑な思い、というかやりきれないと思う。モーリスのその後は、自分が生んだ「ボレロ」に食われてしまったよう。
私の「ボレロ」は、「愛と悲しみのボレロ」でジョルジュ・ドンが踊っていたモーリス・ベジャール振り付けの、力強く気高く、肉体の美しさを最大に引き出し見せたダンスとの一対。感動しました。胸が一杯だったです。
ラストの10分、オーケストラが奏でるボレロと、その中を、力強くキレよく、躍動と肉体の美しさを極めて見せる男性ダンサーの姿を堪能できて満足しました。指揮する彼自身の脳内モーリスも満足げに見えた。
マルグリットの顔があき竹城に似ていると思っていたら、前田敦子にも似ているようで、そうすると、あき竹城と前田敦子は似ているってことかと、彼女の顔がアップになるたびに検証を試み、まじまじ見つめてしまいました。