「ボレロは永遠に続くかと思われても、実際には15分程度で終わってしまうのですね」ボレロ 永遠の旋律 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ボレロは永遠に続くかと思われても、実際には15分程度で終わってしまうのですね
2024.9.9 字幕 京都シネマ
2024年のフランス映画(121分、G)
作曲家ラヴェルが「ボレロ」を制作するに至った流れを描いた伝記映画
監督:アンヌ・フォンテーヌ
脚本:アンヌ・フォンテーヌ&クレア・バー&ピエール・トリビディク&ジャック・フィエスキ&ジャン=ピエール・ロンジャ
物語の舞台は、フランスのパリ
作曲家のモーリス・ラヴェル(ラファエル・ペルソナ、幼少期:Max Harter)は、バレエダンサーのイダ(ジャンヌ・バリバール)から、次の舞台の楽曲制作を依頼されていた
彼は既存曲を使用してアレンジを加えようと考えていたが、その楽曲の使用権をめぐるトラブルから、その曲が使えなくなってしまった
そこでラヴェルは1から楽曲制作に取り掛かるものの、イメージは膨らんでも、一音も書けぬまま時間だけが過ぎていった
彼には想い人ミシア(ドリア・ティリエ)がいたが、彼は実業家のアルフレッド・エドガーズ(Serge Riaboukine)の妻であり、彼は報道王として名を轟かせていた
前作は音楽評論家ピエール・ラロ(アレクサンドル・タロー)に酷評されて散々な目に遭っていて、これ以上彼を刺激したくないと考えていた
ラヴェルは、本格的に楽曲制作に向き合うために海辺の家に向かい、そこで楽譜と向き合うことになった
だが、彼の耳には様々な雑音が入ってきてしまい、それによって集中できない
ある時、その自然音に何かを感じ取ったラヴェルは、繰り返されるリズムとそれにまとわりつく変化するメロディの存在に気づく
そうしてラヴェルは「ボレロ」の基本的な部分を完成させ、それをイダに渡した
イダはその楽曲を事もあろうか「エロチシズム」と解釈し、そのような作劇を作り上げてしまう
ラヴェルは憤慨するものの、初公演を鑑賞した彼は、イダの解釈が間違っていないことに気付かされる
こうして、「ボレロ」を使用したオペラは絶賛され、ラロも賛辞を送ることになったのである
映画は、「ボレロ」完成後のラヴェルをも描き、彼が脳腫瘍か何かの病気に罹り、手術へと向かう様子が描かれていく
このシーンを挿入した意図は不明だが、このシーンがあることによって、映画は「ボレロ」の映画ではなく、ラヴェルの伝記映画になってしまったように思える
どちらが良いかということはないが、本作は「ボレロ誕生秘話」なのか、「ラヴェルの悲恋話」なのか、「ラヴェルの晩年を描く伝記映画」なのかが曖昧な感じになっていた
原題も「Bolero」なので、彼の老後は別の伝記映画で描き、オペラが絶賛されて終わるというのでもよかったのではないだろうか
いずれにせよ、ラヴェルについて詳しくなくても問題がなく、「ボレロ」に関しては調べなくても聴けばわかるレベルだと思う
冒頭の工場の機械音は彼のボレロに持っていた感覚なのだが、それが否定される流れは面白いと思う
「ボレロ」の曲展開も非常に面白いのだが、リズムは機械音、メロディは生体音だとすれば、それに付随する音は愛の音なのだと思う
変わらない日常の中で、それだけが変化するのが人間というものなので、それを言い換えると「エロチシズム」ということになるのだろう
それは、彼がこだわった赤い手袋のようなもので、それに性を感じていたことを考えれば、「ボレロ」の装飾部分はミシアへの愛だったのかな、と感じた