「星はいつも三つです。」ボレロ 永遠の旋律 フェルマーさんの映画レビュー(感想・評価)
星はいつも三つです。
アンヌ・フォンテーヌ監督『ボレロ 永遠の旋律』
ラヴェルの生涯を追った伝記映画ではなく、『ボレロ』を作曲した1928年にフォーカスし時系列や場所をけっこう自在に行き来させた構成。晩年には脳の疾患によって記憶や現実認識が困難になっていったというラヴェルの意識を映像にした趣がある。
Aフォンテーヌ監督、なかなかです。
パリの住居というと装飾過剰気味な狭苦しい部屋をイメージします。少々埃っぽいが整然とした物置、といった雰囲気があります。映画で描かれる様々な部屋、住まいからはパリの匂いが立ちのぼってくるようです。
私が初めてお小遣いで買ったレコードは『ボレ
ロ』でした。
ピエール・デルヴォー指揮コロンヌ管弦楽団、EMIのセラフィム盤です。安かったからです。「クラシック名盤ガイド」の類では絶ッ対に推薦されるディスクではありませんが、今となると「よくぞこのレコードを買った」と十三歳の私を誉めてやりたい。なまくらなオーケストラの音は、ラヴェルが生きていたころのパリの空気をよみがえらせてくれているかのようです。
映画でも触れられていますが、ラヴェルは第一次世界大戦で心に大きな傷を負ったといわれています。戦争はどの時代でも悲惨なものに違いありませんが、第一次世界大戦は例えばナポレオン時代の戦争のイメージから
ガラッと変わり、科学技術を駆使しての殺戮の応酬という現代の戦争。当時のヨーロッパの人たちに大きな衝撃を与えたといいます。芸術と第一世界大戦という切り口はこの映画では深くは掘り下げられてはいませんがまた調べてみようと思いました。
また映画ではラヴェルは『ボレロ』の委嘱者、イダ
・ルービンシュタインの振り付けを気に入らなかったと表現されています。
そのあたり、どうだったのか。いろいろ知りたいことが出てきたのでラヴェルの伝記、読んでみようと思いました。