「奥底に燃えるバスクの熱情」ボレロ 永遠の旋律 marcomKさんの映画レビュー(感想・評価)
奥底に燃えるバスクの熱情
人口に膾炙した現代のボレロの快調な出だしを経て、産みの苦しさというかこの稀代の名作がどういう経緯で生まれたか、それによりラヴェルの人生がどうなったかが描かれています。春祭と違って初演から大成功だったのは、ラヴェルが既に名声を確立しており、繰り返しという革新以外は不協和音等も使用せずメロディーがわかりやすいことも効いていたのだと思います。晩年は、メンタル、フィジカル共にかなり病んでいて、自作すら認知できなくなっていたことは知りませんでした。
スイスの時計職人と称される緻密な書法で珠玉の作品群を残していますが、その奥底にはバスクの燃えるような熱情を秘めていて、後期の苦しみの中からボレロや2つのピアノ協奏曲となって噴出します。映画では、行き来する時制が事情通以外の人にはかなり難解かもしれません。彼の謎めいたセクシュアリティ(アセックスというのか?)が、パリの娼館で示唆され、彼を取り巻くマダム達の優雅な色香が典雅な時代の息吹きを伝えていました。また、ローマ賞落選からの自殺未遂も初見で、必要悪の評論家との応酬など、芸術家と社会の一筋縄でいかない関係性もきちんと描かれていました。
ラストが、群舞でなくパリオペラ座エトワールによるソロだったのが、後半のもやもやとした鬱屈した空気を一転させて、カタルシスを得ることが出来ました。
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