「東映制作陣の底力」十一人の賊軍 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
東映制作陣の底力
白石和彌監督の前作に引き続いての時代劇。今回はお得意の生身の人間の痛さを味わわせるようなアクション劇で、2時間半の緩みない演出は、もはや巨匠の域に達したかのよう。
戊辰戦争を舞台にしていて、考えてみたら、日本刀での斬り合いと銃や大砲などの兵器が渾然一体となった戦いで、これは東映が最も得意とするところ。特に今作は新潟を舞台にしているので、黒い水(石油)を使った爆破シーンが凄まじい。密度の濃い画面に、リアルかつ美しい群像チャンバラ、銃・爆薬・炎の特殊効果と、東映制作陣の底力を見せつけられた感じ。
物語としては、もう少し賊軍たちにフォーカスしても良かったのでは。主人公二人の対決とか、ニセの弟が兄を慕う因縁話とか、あってもよかった。
役者陣では、特に仲野太賀に眼を見張った。ラストの壮絶な殺陣が本当に凄い。尾上右近もコメディリリーフ的でいい味。謎の侍、本山力の刀姿が美しい。鞘師里保はもう少し蓮っ葉さがほしかった。
シナリオを練り直して、いっそのこと3時間を超える大作にしていれば、七人の侍に匹敵するくらいの作品になっていたかも、と思うところ。
コメントする