劇場公開日 2024年11月1日

「期待度○観賞後の満足度△ 演出のテンポが如何にも悪い。話の語り口も結構おざなり。映像のクリアさもよし悪し。却ってリアルさに欠ける。残念乍らシリアス時代劇にも娯楽時代劇にもなっていない中途半端さ。」十一人の賊軍 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0期待度○観賞後の満足度△ 演出のテンポが如何にも悪い。話の語り口も結構おざなり。映像のクリアさもよし悪し。却ってリアルさに欠ける。残念乍らシリアス時代劇にも娯楽時代劇にもなっていない中途半端さ。

2024年11月4日
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鑑賞方法:映画館

①評価高い『孤狼の血』は未見だけど『凶悪』の白石和彌監督はどこ行ったという感じ。『碁盤切り』も差程感心しなかったし。
②一本の吊り橋が掛かっているだけの狭い谷を挟んでのあっちとこっちとの攻防が話の中心ではスケールが小さく盛り上がらない。
新発田藩に入るのがこの橋だけという設定も普通に考えれば「嘘でしょう」というレベル。
③十一人の罪人達のキャラもあまり立っていないうえ知らない俳優さんが多く印象にそれほど残らない。
④関ヶ原の戦いにしても戊辰戦争にしてもどちらにつくかで国(本当は江戸時代には藩という呼び名は一般的ではなかったらしい)とその領民をはじめとする構成員の運命が左右されるのだから、単に武士の義とか恩義とかで割りきれるものではないだろう。
その決断を迫られる国の行政トップである上級武士達の葛藤と権謀術数、それにより利用され運命を左右される社会の再下級層といえる罪人達との対比が上手く描かれているとは云えないので、武士階級の冷酷さとその裏にある苦悩、階級社会の底辺で抑圧される者たちの嘆きと怒り、その当たりの描き方が表面的で胸に迫らない。
⑤映像がクリアなのも却って作り物くささを際立たせてしまっている。いくら血が吹き出しても、爆発で肉片が飛び散っても、首を落としても現実味がない。リアルさを追求しているのか、様式美を追求しているのが、それらの融合を目指したのかわからないが成功しているとは言いがたい。
⑥政が武士に性的虐待をされた女房のもとに駆け付ける冒頭のシーンは、これまで何本もの時代劇映画・テレビ時代劇で使われてお馴染みの撮影セットで撮影されているので、先ずここで、虚構の世界に入って行くんだ、という気持ちが逆に現実に引き戻されてしまった。
⑦ラスト近く、なつが『あんたには幸せになってほしい』と自分が貰った大枚の小判を、女郎になった政の女房に渡すが、聾唖の女郎にそんな大枚を渡しても女郎屋の女将に取られるか誰かに盗まれるかがヲチなので幸せになれるわけもなくリアリティがない。
政の手拭いに泣き崩れるところだけにしておけばよかったのに。
⑧阿部サダヲに武士らしさも一国の命運を任された家老の貫禄もないのがイタイ。
⑨題名からの連想で(「人数+名詞」)で『七人の侍』とついつい比較しながら観てしまったので点が辛くなったのかもしれないけれども、どちらにせよ感興湧かず。

もーさん
YOUさんのコメント
2024年11月16日

まったく同感です!
家老の描き方(身の振り方)をもうちょっとなんとかできなかったかと。

YOU