劇場公開日 2025年10月10日

「そばにいて」ホウセンカ セッキーかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 そばにいて

2025年10月23日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

主人公:阿久津は独房で人生の最期を迎えようとしていた。そこへ枕元の一輪のホウセンカが彼に語りかける。阿久津はこれまでの人生を回顧し、ホウセンカへここへ来るまでの経緯をポツリポツリと語り始める。

本作は、オッドタクシーの作画の担当者が製作に協力していることを知り、鑑賞することにした。結果的に本作の完成度は非常に高く、単一アニメ映画として素晴らしいものであった。

まず、ストーリーの引き込む力がすごい。無期懲役となった主人公が事件を起こすまでの経緯を淡々と語る。結果は最悪となってしまったが、そこに至るまでの内容に矛盾するような点はないし、主人公の判断を疑うような点もない。そこに置かれた状況で最善の手を打ってきた。だから観客は、最後まで主人公へ感情移入し、気持ちを切らさずに観ることができる。

本作は、細部への気配りも感じられた。まずは、ホウセンカというタイトルだが、この花の花言葉を知っている人なら鑑賞する前からある程度内容が分かるようになっている。そして、作中で何度か登場するスタンドバイミーという曲もまさに本作の内容をそのまま表現しているようなものとなっている。小さな部分では、オセロの盤面や実際の法律の引用など、専門的な知識が必要な部分にも血が通っていることが感じられる。これらは、主人公が最後まで最善を尽くし続けたことへの感動に繋がる。

最近公開されるアニメ映画のほとんどはシリーズものである。その中で本作はそれらの対抗馬となっている。本作は、ひたすらにストーリーを精巧に作ることに注力している。ストーリーに関係のない萌えキャラや有名声優により観客数を増やそうとするアニメ映画製作者とでは志の高さが天と地の差である。

こういったアニメ映画を観ることができて嬉しい。しかし、上映開始後、約1週間時点で鑑賞したが、1日1回の上映で、地元の館内には観客は5名程度しかいなかった。本作のような実直に物語を製作する正しい努力をした人が評価される世界であってほしい。

セッキーかもめ
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