「これぐらいの傑作はいつでも作れますよ、と余裕すら感じる才能に嫉妬する。」ホウセンカ ケージさんの映画レビュー(感想・評価)
これぐらいの傑作はいつでも作れますよ、と余裕すら感じる才能に嫉妬する。
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傑作「オッドタクシー」の此元和津也×木下麦タッグの新作。
「オッドタクシー」ほどの作品を作れる才能からしたら、これぐらいの小品は簡単に作れますよ的な余裕すら感じ、その余裕すら心地良く思えてしまう。
伏線はこれ伏線ですよと分かりやすく配置されていて、お話しとして物足りなさを感じるかも知れないが、ちゃんと肉付けして綺麗に回収しているので心地良い。
主人公であるヤクザには分かりやすく顔に傷があり、キーワードである一発逆転は野球の逆転サヨナラホームランやオセロゲームなどこれも分かりやすく明示される。
ヤクザ稼業、心臓病、ちょっと無理矢理なスタンド・バイ・ミーなど分かりやすく小話に徹している。
主人公の阿久津が那奈に獄中から送る手紙には検閲が入り、明らかに問題ある部分は黒塗りで消されて送られる。
阿久津はそれを承知で計算してオセロのように黒く裏返していく。
わざと分かりやすくし消されることで伝えたい事を浮き上らせる、これは作品自体も同じで、徹底的に分かりやすく明示されたものを消していくと浮かび上がってくるのはひとつ、阿久津が口に出すことが無かった言葉、自ら黒塗りしていた言葉、ただ色々な事や日々を重ね合わせると浮かぶ言葉、光に照らすと浮かんでくる言葉。
それが届いたときに流れるスタンド・バイ・ミーは反則で泣くしかない。
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