「憧れと懐かしさ」ザ・バイクライダーズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
憧れと懐かしさ
予告を目にしなかったので、鑑賞予定に入れてなかったのですが、本サイトの紹介文から、古きよきアメリカの匂いを感じて鑑賞してきました。特に劇的なストーリー展開があるわけではありませんが、なかなかおもしろかったです。
ストーリーは、1960年代のアメリカのシカゴで、ごく普通の少女キャシーが、友達に呼ばれて初めて訪れた、ジョニー率いるバイクライダー「ヴァンダルズ」の溜まり場で、偶然出会ったベニーに惹かれ、わずか5週間後に結婚するが、バイクと暴力に飲み込まれていくようなベニーとの関係はしだいにギクシャクし出し、急速に規模を拡大していく「ヴァンダルズ」も内部に不協和音が響き始めていくというもの。
全体的には、現在のキャシーにインタビューを行う体で、ベニーとの出会いから回想するようにドキュメンタリー風に展開していきます。そのため、時系列は多少前後しますが、混乱することはありません。むしろ、キャシーとベニーの出会いから、ヴァンダルズの変貌を経ての現在の二人の様子までが、とてもわかりやすく描かれています。
その中で紡がれるベニーとジョニーの絆、ベニーを慕うキャシーの愛が沁みます。ベニーは多くを語らず、彼の真意がどこにあるのかわかりにくい部分はありますが、バイク好きな寡黙な男が、その“好き”をただ貫いただけのようにも見えます。
一方のジョニーは、仲間を思うが故に不本意ながらチームを拡大して、自身が危惧していたとおりの結果を招くのですが、それを甘んじて受け入れるような潔さを感じます。「人生はままならないもの」と捉える彼の言葉が印象的です。
この二人の男性に対してキャシーは、大切なベニーとの生活を守りたい一心で自身の思いをストレートにぶつけます。ベニーに対する束縛のようにも映りますが、愛する男性との平穏な日々を求める、女性らしい姿が対照的に描かれます。
そんな三者三様の生き様が交錯し、そこに絡むように描かれるヴァンダルズに集う男たちの狂信的で刹那的で暴力的な姿が、時代を感じさせます。登場するバイクも、いかにもアメリカンな感じで、エンジンの重低音が心地よく、風を受けてを疾走する姿に憧れを感じます。自分も以前にバイクを何台も乗り継いでいたので、懐かしさを覚え、ノスタルジックな気分に浸れました。おそらく、そんな気分を求めて来場したのか、観客の大半は中高年男性で、鑑賞中は全員ヴァンダルズの一員だったことでしょう。
主なキャストは、オースティン・バトラー、トム・ハーディ、ジョディ・カマー、マイケル・シャノン、マイク・ファイスト、ノーマン・リーダスら。先日観た「ヴェノム」とはうってかわって、トム・ハーディが渋くてかっこよかったです。
共感ありがとうございます。
怖そうな中に入っていくキャシーの描写が良かったです。最初はピクニックとかほのぼのしてたんですがね、どうしても世間の目の通りになって行きますね。