ひゃくえむ。のレビュー・感想・評価
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その一瞬だけじゃないね
ヒャクエムと書いて、実は人生そのものね。ping pongという私が大好きなTVアニメを思い出しました。
自分も小学中学の時に100mやったことがあるんですけど、もちろん専門的なトレーニングは全然やってなくて、個人趣味の感じで、振り返れば忘れられない思い出になりました。
こういう極上短時間の競技と終わった瞬間のために、実はあらゆる情緒と自分の人生をかけること自体は、どんな人生の歩み方にも通じると思います。
作品としては、あえて控えめなbgmの流れ方が好き、作画もほぼ全編ロストコープで決して美形ではなく、リアリティの人物の表情、抗う姿も全部刺されました。
一つだけちょっと惜しい点としては、ストーリーは若干ドキュメンタリーな感じて起伏は映画としてではなく、TVアニメとしてはちょうどいい感じで、まあ、そっちの方が制作コストもかなり負担が増えて無理ですよね。個人的にこういう今の控えめのリアリティストーリーが好みです!
ラストが知りたくて原作読んだ
ゴール 二人がほぼかさなっている。そして勝敗は?その後の人生とか含みがあるのか、
知りたくて原作読んだ。。現在でも ゴールは書かれてなかった。
それは 各自の人生だからという 含みなのか。
原作者は、顔出しNGの若い人らしい。「チ」の原作者でもあると。。
100エムから感じとれるテーマ
自分的には、生きるテーマって何なのか、って問いかけられた気がした。
昔神童 カメラアイ 、数字オリンピック選抜 全国模試トップ 、東大理Ⅲの卒業生、
あの人達の今、話題によく載るM3.comの記事やっぱり読んでしまう。
その中にはネットですぐわかる人もいるが、
うらやましい日々にあるようにはとても思えない。
しあわせな人生 とは、、。
私、毎日追い込まれるように仕事をしていないと落ち着かない
「たまには お休みとったらどうですか?」って。
陸上愛
チ。なぜ走るのかについて
かっこよかった。
映像、音響、演出が良かった。
インハイで、小宮に負けて世界から色が消えるような演出、良かった。
財津選手と海堂選手の語りも良かった。
財津選手の語りはあの速さで聞くと「なんて?」となり、良かった。原作はゆっくり読めるし読み返せるからかそこまで思わなかったけど、普通に喋るスピードで聞くと「もっかい言って!メモるから!」となるな、と思った。
海堂選手の語りは、喋りで聞いた方が分かりやすいな。となり、解釈一致と思った。金メダリストの人の書籍で読んだセルフイメージと、実力の話を思い出した。
原作改変は多く、それによりトガシはより綺麗なトガシになってたな、と思う。
トガシの駄目なとこが好きな原作読者勢はちょっとガッカリかもしれないけど、小宮から見たトガシと解釈するならばこの位の綺麗さが調度良いのではないか。
つまり主人公は小宮(と、小宮の憧れたトガシ)ってことだったんじゃないですかね。
オープニングの小宮とトガシのやりとり良かったよね。
全国の小宮になれなかった皆で集まって酒が飲みたいと思いました。
「俺はここからでも小宮になってみせる」って気持ち、持ってる奴の事応援したい。
ガチになる、って超怖いけど、やっぱ魅力的なんだよな。
って思いました。
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トンネルのエピソードは何故アレにしたのか。
トンネルだからええんじゃないか、アレは。
尺の都合ですか?
エピソード強すぎるから?
と、思ったので、星は0.5減らしました。
絵的にも見たかったなぁ、動画で。トンネル。
観てからずっと反芻してたんですけど、映画のアレはアレでいいな…と思うようになってきました。
(「トンネル観たかった」は、それはそれで本音なんで減らしはそのままにしました。)
走るだけ、なんです
折角アニメにするのならば
我が家の二人は二人ともが十年間の学生時代を陸上部員として送っており、世界陸上が開催中とあっては、100mスプリントがテーマの本作を見逃す訳には行きません。前評判も上々の様です。
小学校時代から天才的スプリンターだった男と、鈍足の子供時代から努力でのし上がって来た男の物語です。
う~ん、ボンクラ陸上部員だった僕にはトップ・アスリートの気持ちなど知る術もありませんが、「なぜ走るのか?」をそこまで突き詰める必要があったのでしょうか。「1/100秒でも早く走りたいから」ではダメなのでしょうか。しかも、それをやたらと台詞で説明してしまった為に人物描写が浅くなってしまいました。
そして、僕が是非観てみたかったのは「10秒間にアスリートの眼には何が見えているのか」を表現した映像です。それは、スプリンターの頭に小型カメラを付けて撮影した映像とは全く異なるものである筈で、アニメーション(或いはCG)でしか表せない世界です。しかし、本作ではその映像は殆どありませんでした。
何だか消化不良のまま終わってしまいました。
最高の10秒を味わう
漫画に描かれていた熱量や狂気的な雰囲気はなく、丁寧で綺麗な作品になっています。
そこを期待して見に行くとがっかりするかもしれません。
でもそんなことはどうだったいい。
たった10秒。されど10秒。
すべてが詰まった10秒を味わえた。
細かいことはいい。シンプルに考えよう。
私にとって最高に満足できる10秒だった。
傑作!生々しく、そして美しい!
原作は未読ですが、原作者である魚豊先生の出世作であり傑作の「チ。 - 地球の運動について-」は、全巻読破しております。「チ。」・・・は間違いなく傑作と思います。
魚豊先生の作品が原作ということで、このアニメ作品も鑑賞した次第です。
結論から言いますと、こちらはまず劇場公開作として完成度が高くまさに傑作といえる出来でした。本当に素晴らしい!
足が人より抜きん出て早い・・・という生まれつきの特性から小学生時代、望むものをあたり前のように手に入れてきた主人公トガシ。彼のもとに、日常の苦しみから逃避するため、自分を痛めつける様にがむしゃらに走る小宮が転校してきます。トガシから走り方を教わり、練習に打ち込むことで実力をつけ、ついには結果を出せるまでになった小宮。しかし、彼らには唐突な別れが待ち受けてました・・・から始まる、100m徒競走に人生をかける人々のストーリーです。
レースシーン以外では映像の動作がそこまで活発でないのに動画が妙に生き生きしていると思ったら、ロトスコープ(実写をなぞって動画をおこすみたいな)の手法を取り入れているらしいです。
動きの少ない場面では3Dとも手書きとも異なる独特の絵の生々しさがまず目を惹き、レースシーンなど、いざ場面が活発動き出きだすと、やや誇張されたキャラの心象描写がアニメ的に上塗りされ、それらが効果的にクッキリ浮かび上がるように演出されてます。
うまく言語化できてるか自信ないですけど、とても面白く美しい映像効果ですね。
そしてストーリー、脚本も秀逸です!100mを主題にした哲学書を読ませるような思想的重厚さに価値を求める・・・と思ったらそれだけでなく、直感的、本能的な答えも同等の価値があると述べていたりと、とても多様性に富んでいます。
タイム表示が一切出ないのも良く考えられてますね。その舞台に選ばれた人々がガチで競い、凝縮された10秒後に他者よりも一歩でも前に出るのが至高!それは美しく、尊く、そして狂気の沙汰?でもあるんですよね。
本当に素晴らしい作品でした。ぜひご鑑賞を!
何度も観返したい気持ちの昂りが湧いた
観終わって、すごいモノを観た衝撃。
頭を叩かれたようなこの感じは、『ルックバック』+岩井澤監督の前作『音楽』級。
その『音楽』同様に、「衝動=気持ち(情動)に突き動かされる、純粋な行動」の表現と。
『ルックバック』や『THE FIRST SLAM DUNK』に似た、「アニメーションならではの【動き】の視覚的感動」と。
『秒速5センチメートル』の「男女二人が離れていくのではなく同じ志で競いあっていたら?」とか、『ルックバック』の「京本がもしも生きていて、藤野の理解者ではなくライバルだったら?」とかみたいな"IF"感があるような、ワクワク。
なんか、何度も何度も観返したい気持ちの昂りが湧いてきました。
原作の漫画は未読なので、どれほどの違いがあるか興味が湧き、(電子で単行本出ているようなら)買って読んでみようかと思いました。
おそらく、アニメーションでは、動かすうえでの情報(呼吸や雨などすら)によって登場人物たちそれぞれの衝動、走る動機を見せることに力点を置かれていたので、原作ではもっとそれぞれのキャラのエピソードや思いが書かれているんではないか?と推測しました。
逆にアニメーションではいかに原作から情報を削ぎ落して、「トガシが走る理由を見つけるまでの全力疾走だけ」を描き切ったのではないか、と思わせてくれました。
桃李だったぁーー!!
そうだった!トガシ桃李だったぁー!
二宮も染谷君だった!
そうだったそうだった。
フライヤー見てたはずなのにすっかり忘れてて、気付かず観終えてクレジットで思い出す!
ああ〜!
ちゃんと2人って認識して観たかった〜orz
まぁ、違和感なく観れたので、バッチリだったという事なんだが、2人のファンなので、分かった上で観たかったぁ〜orz
で、チ。ですよ。チ。の
(「チ。ー地球の運動についてー」)
魚豊先生の連載デビュー作。
「ひゃくえむ。」
原作ファンです。
この隠れた名作が映画化とは!!
個人的にはド派手メジャー作品
「チェンソーマン・レゼ篇」よりも期待していました。
1つの事に命をかけて「ガチ」で向き合った事もなければ、陸上競技に熱心な訳でもない私ですが、この「スポコンx哲学」の世界観に魅了され、そして「10秒」という、言ってしまえば「一瞬」、儚いけど熱い!
「100mの直線を10秒で走るだけ」
この究ーーー極!シンプルな競技に身を置くキャラクター達の人生から目が離せなくなったのです。
当たり前だけど、どんな事でも"極める"って半端ない事で、そんな世界に身を置く度胸もなければ(勿論才能もありませんが)覚悟もない、38度ぬるま湯に浸かった人生を歩んでいるワタクシには無縁の世界過ぎて。。
だからこそ、惹きつけられるのかもしれません。
自分語りになるのでココは飛ばしてもらっていいのですが、私の通っていた中学校は、市だったか県だったかで一番広い校庭があった学校で、運動部が盛ん。
生徒6割が運動部に所属しているような学校で、毎日部活!休みなし!
顧問も熱血系でした。
(陸部も強かった)
私は器械体操部に入りました。
何の興味もなかったけど、主な活動場所が
「体育館」だったから。
だってさ。外ヤじゃん。
砂埃とか日焼けとか。。w
そんなやる気ゼロの私でしたが、何だか上手だったんですよね。
2年生になる頃には大会規定の技も出来たし、うるへ〜先輩よりも上手かった。
でも情熱も向上心もないのでサボるんです。
よくサボってましたねぇ〜。
こんなにサボる生徒ははじめてだ!
先生からも先輩からも呼び出され説教されてましたねぇ〜。
(私は出来るんだからいいじゃん。
自分達の方こそ頑張って練習しなよって思ってました。
嫌なヤツですねーー(°▽°)
(あ。
不良とかヤンキーじゃありませんよ。
図書館行って本読んだり、父のコレクションの角川映画とか見てましたからw)
だから本作の登場人物達の様なストイックさゼロで、こんな私でごめんなんだけど、この作品から伝わる熱気狂気が暑苦しく感じない。
イヤじゃないんです。
むしろイイナって思えちゃう。
原作ファンなので、大幅なシナリオ変更には残念な気持ちもありますが、伝えたいテーマをシンプルに、力強くストレートにぶつけてくる、原作をリスペクトした構成になっていたと思います。
尺の都合からもこの改変は英断だと納得出来ました。
ただ、1つだけ言わせて。
小宮についてはもっと掘り下げないとぉ!
彼の"狂気"が伝わりきれていない。
彼の"奥行き"が表現出来ていなかったかナァ〜と感じた。
(あれだとちょっと変わり者に見える??)
他のキャラ、仁神、海棠、財津、樺木らも、誰が誰だか名前と顔が一致したかな?とか、どの様な選手だか分かったかな?とか不安も。。
初見の方にどう映ったか不安もありますし、原作ファンからの評価も厳しくなるのかな?と心配な所ではありますが、とは言え、とても心に響く作品に仕上がっておりました。
作画が素晴らしかったです!
特に雨のインハイのシーンは鳥肌モノで衝撃が走りました!
素晴らしかったです!
鬼滅とかチェンソーとは違った最高の技術、プロの仕事が拝めます。
ロトスコも効いていました。
登場人物それぞれの、哲学者の様な、難しい、深い深〜い台詞が多いのも見所なんですが、難解すぎて、その意味を理解しようと頭の中で反復する。。
間もなく進んでしまうので(°▽°)
未読の方には是非原作を読んで頂きたいのですが、紙の本は現在絶版?!
新装版上下巻も入手困難のようデスorz
電子ならいけそうなので読んで欲しな。
けど映画も。
良い映画だったな。
しみじみと思う。
泣いちゃうけど心が温かくなる。
原作好きにはオススメできない。陸上好きはぜひ見て欲しい。
作画は素晴らしいが、原作改変が凄まじい。
原作で描写されていた、走ることへの「熱意」や「執念」が大幅にカットされていて、それぞれのキャラの個性が無くなっていた。
「陸上」という競技の映画として見れば、臨場感、没入感があり素晴らしい出来だと思った。
原作が好きな人は覚悟して見てほしい。
らしさ
今年のアニメ映画の中でもトップクラスに期待しており、予告にあらすじにどんどんワクワクさせられました。
映画を観る前に原作を読もうか迷いましたが、映画を観てから漫画のコースを選択しました。
特典は色紙風ビジュアルカードでした。
最っっ高でした!
100m走に己をぶつけ、全てを賭けたキャラクターたちの熱い生き様、頭脳の良さとメンタルの維持の仕方、それぞれの選手の100m走に挑む姿勢、100m走の魅力と狂気、競技時間は10秒と少し、その時間のために紡がれた濃密な時間をこれでもかってくらい味わえて昂りまくりでした。
小学生時代での出会い、中学生時代のスランプ、高校生時代のトラウマの払拭、社会人として挑む競技への苦悩、原点に立ち返った最後の100m走。
てっきり天才を追いかける方が主人公かと思ったら、天才であった側が悩み生き抜く様子を鮮明に描くというのが強烈に面白かったです。
小学生での100m走で負け無しのトガシが、転校生で走る事で嫌な事を忘れている小宮と出会い、常に本気で走る自分とのスタンスの比較や、中学生トップの仁神との競走もあり、小宮との本気の100m走でゾワっとさせられるという小学生パートから濃厚でした。
こんなに考えまくってる小学生すげぇなと思いましたし、小宮が狂ったように走る練習をし、その上でしっかりと速くなっていく様子も描かれていて、人の速くなる過程を短時間でかつしっかりと魅せられたパワーがエグかったです。
小学生の時が間違いなく足の速さで地位を勝ち取っていたといっても過言ではなく、自分も5・6年生で運動会でクラス代表リレーに選出された時はめちゃんこ嬉しかったですし、マラソン大会で大逃げを打って沸かせたりするのが好きでしたし、1番走りに熱が入っていたのは小学生時代だったなと思い出しました。
中学生で思っていた以上に記録が伸びず、そのまま陸上の道を諦めてしまったトガシ。
高校生になってから陸上部の浅草さんに勧誘を受け一度は断るものの、試しに一度本気で走ってみたら、昔感じた感覚をビシッと取り戻し、陸上部存続のためにリレー大会への出場、かつての中学生チャンプの仁神も同じ学校という事が判明してから部員4人でのリレー大会に挑み、存続を掴み取るというパートをバンバン描いてくれるので爽快感満載です。
リレーは今作の本筋とはまた違いますが、リスクのあるバトンパスを用いてタイムを縮める地道な作業や、走る時にホロスコープを起用していて、より人間らしいフォームで走っているのが見応えがありましたし、あっという間に追い越していく様子なんかは遠目に見ても臨場感がありました。
感覚を取り戻したトガシがガンガン大会を勝ち進んでいくところに、九州で密かに牙を研いでいた小宮が大会での記録を打ち出していき、トガシとの直接対決で難なく打ちのめす様子は一瞬だからこそズシッとのしかかるものがありました。
ひたすらに自主練で足を速くしていく中で、一度本気で走った時に負った怪我の感覚が抜けず、スタートセンスは抜群なのに後半は失速してしまい、尚且つ走る時のフォームは崩れまくり、それでもスピードは上がり続けるというアンバランスな状態の中で、高校陸上の記録保持者の財津の言葉に感銘を受けて、リスクを恐れず突き進むスタイルになった事により覚醒した小宮パートは淡々と狂気を感じさせるものになっていました。
そこからあっという間に10年の月日が経ち、会社勤めをしながら陸上を続けていたトガシは記録に伸び悩み、若手の台頭もあって少し苦しんでいる中で、同じ会社の先輩の海堂の現実に対する姿勢を指摘されてから再び吹っ切れて、モチベーションも記録も向上させていくパートも熱かったです。
そんな中で肉離れを起こしてしまい、競技から一時期離れないといけず、会社との契約も切れてしまうという残酷な現実が襲ってきてしまい、公園で人目もはばからず泣きじゃくってしまうパートは胸が痛くなりました。
トガシの努力を全部は観ておらず、映画の中での出来事しか目撃できていなくても、夢や理想が潰える直前の瞬間がまじまじと映されているのはとてつもなく残忍です。
でも、それでも諦める事はなく、大会での100m3本を走り抜けて競技生活にピリオドを打つという大胆な選択をしたトガシの姿は悲哀なんて全くなくイキイキとしていてカッコ良さが増していました。
大会でのぶつかり合いもヒリヒリするものがあり、実力のある若手よりも先着して存在感を示したトガシ。
2番手3番手に甘んじていた中で全力本気をぶつけて財津と小宮を打ち負かした海堂。
記録にこだわらない人に負けた事を悔しがる小宮。
引き際を見つけた財津。
それぞれの姿勢が静かに、それでも確かに熱くぶつかり合っていました。
最後の10秒間もドラマチックに、そしてトガシが最初に発言した「100m走を1番速く走ればなんでも解決する」を体現した2人の清々しいまでの笑顔で幕引いていくのがもう完璧すぎて震えました。
声優陣はほぼ本職で、松坂桃李くんと染谷くんは俳優としての参戦ですが2人ともキャラにベストマッチしていて最高でした。
普段の2人の声でありながら、このキャラにはこの声以外見つからないんじゃないってくらいの存在感を示していてナイスな起用でした。
熱さを秘めてるトガシと冷淡に熱い小宮の対比もこの2人だからこそ出せたんじゃってくらい完璧でした。
本職陣も大熱演で最高で、内山さんの財津の恐ろしいまでのクールっぷりにはゾクゾクさせられました。
コメディ極ぶりに杉田さんの安心感たるや。
髭男の主題歌も作品を一気になぞるようなスピード感あるものになっていて良かったですし、岩井澤監督らしく音楽での緩急の付け方がエグかったです。
作画も高クオリティで、ヌルヌル動くのが人間らしさに繋がっていて良かったですし、キャラの表情も必死さがバンバン伝わってきて最高でした。
最高の100m走追体験でした。
映画館の大スクリーンで味わえる確かな熱、これに勝るものはないだろうというくらい感動しました。
間違いなく今年ベスト候補です。
鑑賞日 9/19
鑑賞時間 17:10〜19:05
メリハリのあるアニメーションが、ドラマチックな物語と、名言集のような台詞の数々を盛り立てる
ロトスコープによる写実的で滑らかな作画に目を奪われる。
特に、中盤の、雨の中での競技会のシーンでは、入場からスタートまでの選手達の動きを長回しのワンカットで捉えることにより、まるで実況中継のような臨場感と緊張感を生み出しているし、遠くのスタンドは雨で霞んでいるのに、眼前のトラックはクッキリと浮かび上がっているなど、選手の心情を映し出したかのような演出も加えられていて、見応えがあった。
しかも、こうしたリアルで繊細な描写があるからこそ、デフォルメや「なぐり書き」のような作画の躍動感が際立つようになっていて、そういうメリハリが感じられるところも良くできていたと思う。
特に、小宮が最初にがむしゃらに走る場面や、トガシが小学生達に「走ることになんか人生を賭けるな」と泣きながら語る場面、あるいは、ラストのレースで2人が必死の形相で並走する場面では、アニメならではの誇張を楽しむことができ、どうせなら、こうしたダイナミックなシーンが、もっとあっても良かったのではないと思ってしまった。
物語としても、中学で出会ってから、高校と社会人でライバル同士となる2人のアスリートの因縁に引き込まれるし、彼らを取り巻く先輩や後輩との関係性も面白く、あるいは、100m走に居場所を見い出した者たちの覚悟やプレッシャーや焦燥といったものも、ヒシヒシと感じることができた。
人生訓に関する名言集のような台詞の数々も印象的で、中でも、「恐怖や不安は自然なこと」とか、「明日を生きるために今日は死んでいた」とか、「現実逃避は効果的だが、現実は直視しなければならない」とかといった台詞は、ずっしりと心に響く。
その一方で、心のリミッターを外したことで、体を壊すことを危惧されていた小宮が、十数年に渡って故障もせずにトップアスリートで居続けられた理由や、1等賞になりたがっていただけの彼が、順位よりも記録にこだわるようになった理由などは説明されずじまいで、小宮のキャラクターの掘り下げについては、やや物足りなさが残った。
それでも、勝つことより、一つのことに本気(マジ)で打ち込むことの素晴らしさが描かれたエンディングには、心地よい後味を感じることができた。
10秒間の人生哲学
10秒の終わりに始まる試合ーー作品が突きつけてくる哲学
この作品を貫くのは、驚くほど単純で、同時に過激なルールだ――「大抵のことは100mを誰よりも速く走れば解決する」。子どもの頃なら、この言葉は真理のように響く。徒競走で一番なら周囲の尊敬を集め、足の速さこそが揺るぎないアイデンティティになる。しかし、大人になるとその単純さはむしろ呪いに変わる。速さを与えられた者は常に勝ち続けることを求められ、追いすがる者は限界を超えなければならない。『ひゃくえむ。』は、この才と努力の交差点に生じる葛藤や孤独を、緊張感ある描写で掘り下げていく。
だからこそ本作は、単に「速さ」を競う物語ではない。むしろ「なぜ走るのか」を問う物語だ。才能も努力も、勝利も敗北も、すべてはわずか十秒に凝縮される。その十秒に意味を見いだせるのか――これはトガシや小宮に限らず、観客自身に突きつけられた問いとなる。決勝レースでは、スタートと同時に「試合開始まで10秒」のカウントダウンが始まるという大胆な演出が導入される。つまり、レースが終わると同時に“試合”が始まる。ゴールとスタートが重なり合うこの逆説は、終わりが同時に新しい始まりになるという人生観そのものを象徴している。
この哲学性をさらに強調するのが、脇役たちの存在だ。海棠や財津は、勝負の意味を相対化するような哲学的な台詞を放ち、観客に「走るとは何か」「勝つとは何か」という根源的な問いを直球で突きつける。彼らの言葉は競技解説ではなく、人間存在をめぐる思想的断章のように響き、物語を単なるスポ根の枠組みから解放している。
声の演技についても特徴的だ。俳優が声優を務めたことで、“説明くささ”や“棒読み感”が目立つ場面もある。しかしそれすらも作品世界に馴染んでいる。むしろ不自然さこそが哲学的な台詞と噛み合い、現実的な熱量よりも思想的な響きを前面に押し出す効果を生んでいた。観客はキャラクターの会話を「物語内の台詞」としてではなく、「思想そのものの朗読」として受け取ることになる。結果として、この“ぎこちなさ”は異化効果となり、作品の哲学的トーンを補強していた。
さらに、リアリティを支えたのが撮影方法へのこだわりだ。実在のスプリンターのフォームをロトスコープでトレースし、スパイクが地面を蹴る音や雨天での水しぶきまで実際に収録。わずか十秒のレースを「身体感覚」として観客に追体験させる工夫が随所に施されている。その徹底ぶりが、速さの刹那をただの映像ではなく「生きられた現実」として迫らせる。
『ひゃくえむ。』は、十秒の走りを通じて人生を凝縮し、「あなたにとっての十秒は何か」を問いかける作品だ。速さという祝福であり呪いでもある才能、努力することの意味、勝利や敗北を超えて生きるとはどういうことか――すべてがトラック上の十秒に集約される。そしてその問いは、映画を見終えた観客自身の胸の内に、重く、しかし鮮やかに響き続ける。
原作は知らなかったが
原作は知らなかったが、スポ根好きのおっさんにとって、とても良い映画だった。絵もストーリーも、10秒の中に詰まったそれぞれの人生を感じさせるものだった。自分の人生とも重ねながら、あっという2時間弱だった。本気になる事の幸福感をもう一度体感したくなる作品だった。
全305件中、241~260件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
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