劇場公開日 2025年9月19日

「描ききった感じ」ひゃくえむ。 yuki*さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 描ききった感じ

2025年10月14日
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鑑賞方法:映画館

原作未読。
でもおそらく、この作品を題材として、こう描いた映画なら、これ以上はないだろう。
雨や効果音、音楽などを使った演出の巧みさ。
何度も繰り返されるレースに飽きることなく、毎試合ごとに競技場にいるような気分にさせられる。大げさに跳梁したりしないが、しっかりと骨太に見せつける。撮影技術(〇〇スコープ)をよく知らないが、これは活用成功ではないだろうか?
走り方の書き方、目線の引っ張り方も良い。
主題歌もぴったり。
幼い頃からのエピソードの繋がりも、意外性は無いがしみじみしていい。
何度も挫折と奮起を繰り返し、互いの背中を追いかけ、または逃げる選手たちの表情の描き方、本気の伝え方、そしてセリフ。
「チ。」の方は漫画を読んだが、相当腰の入ったセリフを打ち込んでくる作家なので、そのセリフがうまく間を取りながら生きている。
ドラマチックな無駄を削ぎ落としたところにも、活劇的に描くところにも、どちらにも魅力がある。(文学的なものにアレルギーがある人にはあまり向かないが。)
陸上競技の頂点の世界、あそこまでくる人間はみんな天才だが、誰一人として「人間」でないものは居なく、そのリアリティが臨場感を持って伝わる。

この仕事を目撃できて良かったと思う。何かに本気で必死になった人には、気持ちが分かるところがあると思う。そんなことがなかったという人にも、熱が伝わるだろう。
この人になら自分の全力をぶつけても大丈夫で、自分の全力以上を引き出してくれると思える相手はとても貴重だ。しかも、お互いにそうであると、競うとき、どこまでもせり上がっていく、息苦しいほどの感覚はまさに「生きている」感覚なのだ。
有名な俳優が声優をやっていたりもするが、前に出過ぎてなくて、こちらもいい塩梅。

この映画を見るまで、嫌なことがあって気分が最悪まで沈んでいたが、見ているうちに忘れた。
原作を見つけて読みたい。

yuki*
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