「トップアスリートの珠玉の哲学」ひゃくえむ。 ふくすけさんの映画レビュー(感想・評価)
トップアスリートの珠玉の哲学
小学生トガシが「100メートルを誰よりも早く走れば全部解決する。」という。
トガシ(彼だけ、カタカナ)が最初に放つ哲学的言説。
そして、さまざまな紆余曲折を経て、再びこのセリフに回帰する。
登場人物の放つ哲学を全部、記録しておきたい。
原作をそろえれば全部、載っているのかしら。
しかし、最も素晴らしいシーンは雨の全国大会での小宮のセリフ。
「トガシさん、走り変わりましたね。」
言うまでもなく、変わったのは技術的なことではなく、トガシの生きざま。
それを指摘されて、トガシがショックを受けるシーン。
雨ですべてが覆われる。
アニメーションでなければできない表現なのだろう。
「栄光の前に対価を差し出すとき、ちっぽけな細胞の寄せ集めの人生なんてくれてやればいい。」(財津)
「現実から逃避せよ。」→「現実を見ずに逃避するか、苦しい現実をみてそれを乗り越えるか?」(海裳)
「トガシくん、走り変わったね」(小宮)
「明日を生きるために今日死んでました。」
トップアスリートたちは私たちの現実においても、哲学を語る。
大谷翔平、羽生結弦、藤井聡太
ぎりぎりの世界で生きる若武者たちの言葉は美しく深い。
先日観た「宝島」は膨大な事実と時間と心情にあふれ、それらの総体が消化しきれないこと、そこに価値を見いだすべき映画であった。
それに比べて、100メートルは10秒の世界。
その短時間に凝縮される哲学の深さに圧倒される。
トガシの挫折と、理想と現実との折り合い方、涙は初老を迎えないと本当のところはわからないと思ったが、否、深く生きる若者たちにとってはリアルなことなのだろう。
トガシのみカタカナ。
ひゃくえむ。が平仮名「。」付き。
に意味がないわけがない。
多分、この一作のアニメーションの解説の為に本が一冊必要になるのだろう。
すごいものを見てしまった。
鰹西高校とか、鰯第二高校とか、妙な遊び心も楽しい。
試合が始まる前の準備の描写が長い。ロトスコープの効果を最も感じた。
あの空気感を出すのはこの手法がベストだと思った。
実写ではこうはいくまい。
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