「笑えない百六分」ひゃくえむ。 Don-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
笑えない百六分
映画館では、いつも前の方に座るのですが、サイドスピーカが比較的後ろの方にある映画館であることがわかってから、音を重視したくて真ん中あたりに座りました。音が臨場感を楽しむ助けになっているとは思いましたが、それよりも今作は顔のドアップが多いアニメで、目の疲れが軽減されたことが前に座らなくて良かったと思うポイントでした。
時々、特に引きの映像の時に、実写のような斬新なアニメーションになり、その場面は見応えがありました。
水彩画のようなボンヤリした背景の時と、葉っぱ一枚一枚リアルな背景の時があり、特別な意味があるのか考えましたが、単純に実験的に取り入れたのでしょう。
3部構成で、洗練されていない手作り感を楽しむことができるとも言えますが、眠くなるような単調な絵と競走した時の激しい絵のギャップで疲れて、主人公が公園で泣くシーンは松坂桃李さんの演技の見せ所なのでしょうけれど感情移入できず、競争と人生を掛け合わせての知的な会話が説教くさく感じ、ラストは勝っても負けてもハッピーエンドという意味なのでしょうけれどブツ切りに感じました。
足が速いだけで人氣者というのは低学年までですよね。高校時代の陸上部は硬派な人が多いイメージです。そういうところはリアルですが、笑いの要素がなく、良くも悪くも生真面目なアニメでした。
単に「良かった」「微妙だった」といった感想にとどまらず、映画館の座席位置による音響体験や、アニメーション表現の技法、背景描写の意味合いにまで丁寧に目を向けている点が大変勉強になりました。
また、3部構成のリズムや映像と感情表現のギャップ、さらには「高校時代の陸上部像」というリアルさとの対比にまで言及されており、作品の魅力と課題を多角的に捉えたバランスの良い批評に唸らされました。
とりわけ、前方に座るか中央に座るかという映画館での体験の工夫や、映像表現による「目の疲れ」までを具体的に書かれているのはユニークで、読む側も思わず自分の鑑賞体験と重ね合わせたくなります。
作品を楽しむだけでなく「どう受け取ったか」を誠実に記し、読み手に気づきを与えてくれるレビューになっていて、とても読み応えがありました。
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