「たった100m、その距離は…」ひゃくえむ。 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
たった100m、その距離は…
人生だ。希望も失望も絶望も達成も挫折も不安も、喜怒哀楽ぜんぶ10秒につめこんで、本気(マジ)でアツくなれ!負けて本当の意味で始まる人生=現実にどう対峙して、それでも全て捧げて夢中になれるか?現実は直視して何かわからないと逃避できない。人間みんな最後は死ぬんだからマジで生きてみようぜ。
これは今年の『ルックバック』枠で、『ピンポン』✕『国宝』だ!!トガシも小宮も、仁神(カッコ良すぎん?)も海棠(ザ・ツダケンなメンター)も大好き!周囲のキャラが解像度高くリアルで、またとにかく一人ひとりに色んな人生や世界を体現する"らしさ"があって、観客それぞれ推しが違うようにみんな好きになれるのが『ピンポン』みたい。高校時代の沼野のザ・友達感に、"自称"ライバル尾道のいいキャラっぷりに笑ってしまう。樺木がポスト小宮のように塞いだ感じかと思ったら、トガシがスイッチ入ってからは別人みたいだった。そして材津!浅く考えろ、世の中舐めろ、保身に走るな、勝っても攻めろ。
きみは強い!世界のシンプルなルールは、100メートルを誰よりも速く走れば全部解決する。クソみたいな現実もあらゆるしがらみも。現実は逃避できるから(小宮少年の走っていた理由)、走ることで現実と対峙する。不安は対処するものじゃない、一瞬でも栄光を掴めるのならただのちっぽけな細胞の集まりの人生なんてくれてやればいい。恐怖なんてその対価と思って緊張を楽しんで、他の何を犠牲にしても得られない高揚感がここにはある。人間の真価を試されるのは負けてから、敗北と挫折を味わってから。それで"才能"や"経験"など言い訳を並べて腐るか、それでも情熱で立ち上がるか?
誰もがどこがで自分は"絶対的な存在"ではないのだと悟る(グラつく・折れる)瞬間がやってくる。そうやって誰かに負けて誰かの影に隠れて生きてる内に、現実にも敗れて誰もがかつては持ってた"熱"を失っていく。でもそれじゃ生まれて死ぬまで何のために生きてるんだ?そんな熱を本作は奮い起こし、呼び覚ましてくれる。"好き"は強い、夢中は最強、気持ちは伊達じゃない。負けた過去も、目を背けたい現実にも目を背けずに目ン玉ひん剥いてとことん向き合った先に見える景色がある。
俺は俺を認める。それぞれの"それでも"走る理由に、胸がアツくなる。天才の挫折に寡黙な努力の大成…自分が思ってるより50倍アツかった、アツい気持ちを奮い起こさせる忘れられない傑作!「材津か小宮」海棠。負け知らずな少年時代のトガシみたいに、横を見ても誰もいない圧倒的な"絶対王者"No.1(見える景色は最下位と変わらない)という結果の見えた虚しいイージーモードより、追うものがあるNo.2の方が幸せなのかも。競い高め合えるライバルがいるという幸せと厄介さ。才能の有無に関係なく、誰でもアツくなれる才能はある。
「命を燃やす」って表現がピッタリだと思った。監督の前作『音楽』に通ずるテーマとパッション(情熱)。がむしゃらに気持ちで勝て!理屈や傾向と対策じゃない『音楽』よろしく躍動する作画(ロトスコープや試合前の長回し手持ちカット)、リアリティとカクツキと確かな熱量でもって迫ってくる。ずっと凄かったし、正面からの寄りのカット強かった。トガシが各時代にベッドで横になるイメージングシステム(3回)、そのとき彼は一体何を思い考えているのだろうか?孤独やプレッシャー…内向きな恐怖を最大速度で放出するような!大人になるにつれて壁にぶち当たってあれこれごちゃごちゃと考えすぎてしまう内に迷い込むアイデンティティークライシスになっても全て捧げた居場所探しと存在の証明。
泣いた。本当にいい映画に出逢ったら、マジで人生どうとでもなる(できる)ような、日頃感じられないエネルギーが自分の中から溢れてくる・漲ってくるの感じてスゴい!これが映画を観る理由・意味と言っても過言でない、もはやドラッグ。この感動を、カタルシスを、精いっぱいの感覚を真空パックできればな。これはしばらく引きずるな。「本当に良かった」ああ、生きてて良かったな。
ポニーキャニオン製作だからポニキャニアーティストが主題歌は避けられず、また髭男を聴くことは普段ないけど、この号泣しているときに流れる「らしさ」がピッタリだった。本作が終始放つ生命が脈打ち躍動するような本気の勝負は、陸上に無縁な会社員(サラリーマン)にもきっと届きブッ刺さるだろう。琴線に触れ、確かに揺り動かすものがある。
P.S. エンドロールの真ん中くらいまで結構わんわん泣いてたかも。普段聴かないアーティストの好きな映画主題歌理論で言えば、『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』。足遅いけど走りたくなってきたから、おれも河川敷走ってこようかな。
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