ビフォア・サンセット : インタビュー
「スクール・オブ・ロック」のヒットで一躍メジャー監督の仲間入り……かと思いきや、最新作である本作は、キャストもほぼ2人だけ、上映時間も81分というこれ以上になく小規模でインディペンデント的な作品になったリチャード・リンクレイター監督。そんな監督に、小西未来氏がインタビュー。早くも取り掛かっている次回作についても語ってくれた。
リチャード・リンクレイター監督インタビュー
「僕の頭には、へんてこなアイデアがいっぱい詰まってるんだ」 小西未来
――前作「恋人までの距離(ディスタンス)」では曖昧になっていた点が、「ビフォア・サンセット」では明らかになっていますよね。2人が半年後に再会するのかとか、果たして2人がセックスをしたかどうかとか。
「セックスの件に関しては、ジュリー(・デルピー)のアイデアなんだ。あの曖昧さが好きだったんだけど、続編を作る上で、いろんなことを明らかにしようって思ってね。僕の頭のなかでは、2人は寝たことになっていた。前作を見直してもらえばわかると思うけれど、セリーヌの服装はその後なんとなく変わっているし、振る舞いもちょっと違うように見える。まあ、それがセックスをした完璧な証拠とは言えないんだけど(笑)」
――(笑)
「この映画では、2人が約束通り半年後に再会したかどうかという問いにも答えている。つまり、続編自体が前作のネタバレになっている。だから、想像を楽しみたい人は見ない方がいいよ(笑)」
――「スクール・オブ・ロック」の大ヒットのあとに、こうした小規模の映画をやるというのが、インディペンデント映画出身のあなたらしいですね。
「うん。実はスタジオ映画のシステムでも、インディペンデント的な映画を作ることは可能なんだ。監督にそれなりのキャリアがあって、名の知れたタレントを数人捕まえることができれば実現できる。規模はそれなりに小さくなるし、ほとんどただ働きになるからやりたがる人は少ないけど、僕の頭のなかには映画化したいへんてこなアイデアがいっぱい詰まってるからね」
――ちなみに今回の製作費はおいくらぐらいだったんですか?
「約300万ドル。10年前に前作を作ったときと、まったく同じ金額だよ。もう少しあったらいろいろ出来たけど、映画化出来ただけでももうけものだと思っているし、僕自身とても気に入る作品に仕上がってくれた。なにより、ジュリーとイーサンの2人とまた仕事ができたのが、楽しかったな」
――次作は、フィリップ・K・ディック原作の「暗闇のスキャナー」ですよね。
「実は、先週クランクアップしたばかりなんだ。今、編集をしていて、その後アニメーション作業に入る予定なんだ」
――「ウェイキング・ライフ」と同じ手法ですか。
「うん。ただアニメーション技術が進歩したんで、少し違った感じにはなるけど、基本的には同じやり方で。でも、映画は低予算だよ。役者はみんな最低賃金だし。大人のテーマを描いた映画なのに、アニメーションだからお金を出してもらえないんだ。アメリカでは、大人はアニメを見ないと思われているから。業界の分析はある意味で正しいけど、固定観念を壊さなきゃ、新しい物は生まれないと思ってる。だから、僕らは『ビフォア・サンセット』と同じやり方をとった。誰もがリスクを負って、とにかくコストを安く抑えて、って。素晴らしいキャストが集まってくれて、かなりいい感じになってるよ」
――あなたがSFをやるってイメージが湧かないんですけど。
「僕が目指しているのは、フィリップ・K・ディック小説の完璧な映画化なんだ。ほら、他のハリウッド映画は、ディックの小説からアイデアを盗んで、アクション映画に仕立ててしまってる。僕としては、『暗闇のスキャナー』のあの物語を語りたいんだ。ボブ・アークターと友人との物語をね。ツイストやアクションなどはほとんどなくて、キャラクターたちがダラダラ喋るだけっていう、僕流のSF映画だよ(笑)」