「アキサミヨー‼️」宝島 akkie246さんの映画レビュー(感想・評価)
アキサミヨー‼️
生き延びるために悪ガキたちが基地泥棒をしていた戦後すぐの英雄譚。裸足と汗や日焼けにはこだわりました。
SONY、東映、電通。
真藤順丈さんの原作(講談社刊)もaudibleで松本健太氏の朗読で拝聴しました(合計18時間超)。
沖縄の史実を踏まえたアクション活劇。主要登場人物たちはいずれも原作から。
(VXガスとヤクザとフェンス越しの基地が原作のサブテーマとも言えるのだけど三時間かけた映画なのに説明がすくなすぎる)。VXガスが、そもそもわかりにくいのだから、怖さが伝わりにくいのでは?仮に毒物が「サリン」だとしても小説ならともかく、映画では緊張感は出しにくい。レイをいきなり出してきて、ほいよ、VXガスを作った、これから基地で使うよ、という唐突な計画説明は、脅迫相手(グスクのこと)に信用性が低い。これは原作でもそうだったと思う。
米軍側に、技術者が誘拐されているので焦りがあるとかをもっとちゃんと見せないと(バーの黒人が語ってはいたが)。あとあんなマスクでどうにかなるものではないだろう。レイの「計画」の信憑性が低すぎるので、そのあとのオンちゃん逃亡の語りも信憑性が薄まっていた。残念。
コザ騒動(コザ暴動とも。言い方でぜんぜん変わる)は、1970年のクリスマス直前にコザで起きた現実の事件であるが、対アメリカ軍の騒動であったにも関わらず、死亡者はゼロだったという(逮捕者も)。とは言え映画で再現していたような混乱は起きていたらしい。直後の基地内の出来事は小説のフィクションなので、もし本当に死んでいたら死者一名ということになる。
いま、これを主題にした映画製作が可能だったことが単純にすごいとは思う。やりすぎないように、史実を踏まえて再現したのだろうけれど、迫力はあった。ただ基地内の描写が非常に少ないのが物足りず。
1970年というと、大阪万博があった年で、有名人でいうと阿部サダヲさんとか岡村隆史さんが生まれはった年で、比較的近年なのである。
であるけれど、皆忘れている(生まれてない方も多かろう)。アメリカはベトナム戦争をやっていた最中である。ベトナムでは「地獄の黙示録」や「プラトーン」のようなことがあった。アメリカ軍も狂気に満ちた戦争にはまっていたのだと思う。アメリカ軍の肩をもつわけではないが、ベトナム帰りの兵士たちの一部におかしな者たちがいても全然不思議ではない。ただその兵士たちの処分は甘く、基地の町の人々の人権は軽んじられていた。
そもそも沖縄は、明治維新で日本に組み込まれたあと、昭和になって沖縄上陸戦で殺戮や自害を強要されて悲惨な目に会い、戦後も基地の島として米軍統治下での混乱状態がながく続いたということなのだと思う。
若い人たちこそ、見るべき映画。昭和の歴史をここから学ぶのもありだろう。69年には全学連の東大封鎖もあったと聞く。
グスクだけを主人公にするなら、リュウケイ(琉球警察)の雰囲気とか、原作通り中盤で警察やめて探偵になっていたりした方が、面白かった気がします。コミカルになってしまうけれど。
原作と比べると、瀬長亀次郎氏に関する言及とか、語り手の主観みたいなところはことごとく取り除かれていた気がします。それでもラスト近くの基地内でのVXガスのやり取りなど原作とは少し異なる形ではありますが、なんとかおさまっているのにこの映画の運命を見ました。(役者陣に苦労のあとが見えました。)
あの日消えた「オンちゃん」が、どこで死んだのか(まだ生きているのか)の謎をずっと探っていたのが弟のレイと、刑事になったグスク。それを体現しているのがウタと呼ばれるハーフの子供(劇中の数年で若者に育つ)。ウタを主人公にしてウタと義父オンの生涯を見ることがたぶんこの原作の隠しテーマだろう。でももっとフロントにだすべきだったのかも。(最後に飛び出して射殺されるという悲しい結末)
御嶽(のような場所?)で生まれた赤ん坊のためにずっとこの物語が語られてたのだから。(そもそもの着想がどこで湧いたのか気になりますが)どうせやるなら、ハーフの子どもたちをほかにもたくさん出すべきだった。現代に作る意味はそこにあるのに。(すこし違うが「スワロウテイル」みたく)
映画版では、PG12にはなっていたけれど、そこまで残酷な場面はありませんでした。もちろん人によるのだが。たとえば、小説版(朗読版)では戦果アギヤーたちは武器を収奪し、それを使用しながら逃走するのだけれど、映画版では武器は一切奪っていないことになっている(なっていたと思うが、彼らは撃たれていた)。
コザの歓楽街がわりとメインででてくる(つまり嘉手納基地の恩恵を一番受けているということ)のだが、原作ではヤクザ、不良、政治の話がてんこ盛りなのに対してその辺はスパッとカット。
映画「宝島 HIRO'S ILAND」
映画を観た後では、オンちゃんは、永山瑛太、ヤマコは、広瀬すず、グスクは妻夫木聡、レイは窪田正孝を想起させるようになりました。
かなり駆け足で物語に入ってゆくものの、ずっとそのまま駆け足で終わってしまった感あり。
映画と原作は異なることも踏まえてはいますが、音楽も良かったし、美術や衣装さんも頑張っていたことがとてもわかるのですが、世界中の子どもが見ても面白がれるようにすべきなのでは。
レジェンドアンドバタフライを思いだしてしまったのは私だけではないはず。
食料泥棒の話をやっているのに、そこをうまく描けなかったのが最大のミスか。というか、戦後すぐ配給物資が子どもたちにも盗めるようになっていたのはどういうことなのかを考える素材にはなる。(盗んだ木材で小学校建てたとかは法螺半分だと思う)
三時間は長い。長く感じさせないことが救いだけど。せめて二時間ちょっとにして、色々端折った方が良かった。三時間超あっても原作全部は無理。予告編がよいから劇場にくる時代ではないと思う。予告編はよくできてる。できすぎなのかも。
九月公開の理由がなぜだかわからないが、沖縄戦終結の六月にするか、全国が終戦に向かう八月にしとけばよかったのかも。あとは思い切って冬にするか。とにかく尺も公開も伸ばしすぎ。
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