「恐怖ではなく困惑を残す作品」男神 9173867さんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖ではなく困惑を残す作品
限られた予算の中にも工夫の跡がわずかに見える一方で、その工夫が物語や映像世界に統合されることはなく、全体としてはちぐはぐな印象を残した。
穴の奥に広がる世界は異界を示す最大の見せ場であるはずなのに、CGはリアルにも抽象にも振り切れず、観客を引き込むどころか安っぽさを際立たせてしまう。
登場人物がわざわざ馬に乗って現れる場面は、象徴性も必然性もなく、奇をてらっただけの演出に終わっている。
細部を見ても同様だ。
ある人物は最初から最後まで不自然に汚れたままで、観客に残るのは違和感だけである。
加えて、突如として外国人が登場し、英語が交わされる場面があるが、それが物語と結びつくことはなく、異質さを利用した演出としても機能していない。国際性や異界性を強調したいのならば説明や背景が必要だったが、それを欠いたまま挿入したため、ただ唐突で意味不明な要素になっている。
そして最大の失敗はラストである。これまで積み上げた(はずの)出来事を「なぜ?」としか言いようのない唐突な終わり方で片付け、緊張感もテーマ性も放り出してしまった。観客が求めていたのは恐怖や余韻であり、混乱と茶番ではない。結果、終幕はそれまでのドタバタを帳消しにするほどの酷い終止となり、作品全体の評価を決定的に下げてしまった。
しかしその一方で、動物の写し方には時折光るものがあり、おどろおどろしさを漂わせる映像には強い雰囲気が生まれていた。そこだけは作品の方向性が一瞬定まったように感じられる。
日本的ホラーの「静けさ」も、洋画的ホラーの「直球の衝撃」も成立せず、ラストでさえも中途半端に終わったことで、残るのは恐怖や感動ではなく、ただひたすらに「なぜこうなったのか」という疑問である。低予算なりの工夫はあったにせよ、それを作品の力に変えられなかったことが致命的であり、観客に残すのは不気味さではなく困惑と落胆であった。
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