「結構変わった映画に思われました」チャチャ komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
結構変わった映画に思われました
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
今作の映画『チャチャ』は、個人的には結構変わった映画に思われました。
理由は以下2点だったと思われます。
1.モノローグ(1人の心の中のセリフ)が多用されている
2.恋愛映画では私的あまり見たことない後半の展開
そして、私は今作の1のモノローグの多用には否定的で、2の後半の展開は良いなと思われました。
もちろんモノローグはあって良いですし、モノローグが効果的になっている映画ドラマも数多くあるとは思われます。
しかしながら、モノローグを超える、実際の登場人物との間の対立的なやり取りがないとドラマ性は際立たず、モノローグも効果的にはならないと思われるのです。
今作では、それぞれのモノローグと、(実際は対立するやり取りの無い)事実的な場面とが、分離されて描写されており、実際のドラマ性の弱い作品になっていると感じました。
例えば、主人公・チャチャ(伊藤万理華さん)と時折ナレーター的な立ち位置でもありチャチャが苦手だった凛(藤間爽子さん)とが、映画の終盤で凛がチャチャに誕生日を祝われるなど、和解的に関係が良好になった場面があります。
しかしながら、凛のチャチャが苦手であるとの証言は凛自身のモノローグでしか説明されておらず、映画の前半で凛とチャチャとが対立した関係性の描写が実際にしっかりと描かれていなかったために、落差が乏しく、さほど心が動かされなかった映画の最終盤の2人の和解場面になっていたと思われました。
次に、個人的に今作が変わった映画だと思われた理由の2点目である、映画後半の恋愛映画では私はあまり見た記憶がない(樂(中川大志さん)による)展開に関しては、私は面白く好感しました。
主人公・チャチャが、自分と同じ「(樂が)可哀そうな存在だと思った」という、終盤の連れ去られる荷台でチャチャが樂と関係を持った理由を語った場面も、グッとくるものがあったと思われます。
チャチャ自身は周りから浮いた存在であることを自覚していたことがこの時に分かり、その孤独を樂との共有で癒されようとしていたこと、しかし樂の本心と裏切りが分かってその孤独にまた逆戻りするのを悟ったチャチャのその後の車中での涙も、美しさがある映画的な場面だったと思われます。
しかしながら、このチャチャの涙の映画的な最終盤の場面も、映画の特に前半のモノローグの多用による登場人物同士の対立的なドラマ性の希薄さから、本来の感銘さの度合いからすれば物足りなさはあったと思われます。
個人的には、モノローグを抑え、きちんと前半の現実描写場面でも個々の対立を丹念に描いて積み重ねられていれば、後半の樂による予想外の展開や、最後のチャチャと凛との喫茶店での和解の場面などの、前半後半で落差が際立つ、面白い作品になったのではと、僭越ながら思われました。