劇場公開日 2024年7月26日

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「社会的価値と面白さは別物ってこと」流麻溝十五号 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5社会的価値と面白さは別物ってこと

2024年7月31日
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鑑賞方法:映画館

ある思想を持つことを犯罪とする。そんな法律がまかり通る時代があった。宗教や社会主義・共産主義が主にその対象となってきたが、とんでもない社会体制だ。本作は、中国が社会主義化して数年という時代の台湾が舞台で行われた思想的弾圧が描かれる。
「白色テロ」と呼ばれる思想的弾圧が愚かで酷い政策であることは確かだ。そのことを訴えたい気持ちはわかるし、その酷さはちゃんと伝わった。後で調べて初めて知ったが、この当時に出された戒厳令は1987年まで続いたらしい。結構長い間戒厳令が続いていたってことに驚く。
時代背景や歴史的な事実について知らないことが多いから戸惑うことも多い。複数の言語が使われたり、ここに行くとこういう意味があるってことがわかりづらい。それだけじゃなくて登場する主要な3人の行動で、すんなり受け入れられないシーンがいくつかあった。後で見たら複数の人の証言を合わせて作った話らしい。なんとなくしっくりこないのも納得した。
これは現代社会でぬるま湯の生活を送っている人間だから感じる意見かもしれないが、看守たちに反抗する人たちの行動が稚拙に思えてしまう。そこでそこまで反抗することの意味がどこまであるのか疑問に感じるのだ。でも実際あんな仕打ちを続けられたら我慢できずに反抗してしまうのかもしれない。どんな意味があるかなんて関係ないのかも。
題材としての重要度やテーマの重さとか、考えさせられる映画としての価値は高いのだが、映画としての面白さはやや不足していると感じた。当然泣けなかった。

kenshuchu