「戦争から始まった嘘」劇場版 アナウンサーたちの戦争 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争から始まった嘘
キャストが豪華という理由だけで鑑賞。
NHKドラマというと、これまで「スパイの妻」や「太陽の子」などが映画化されてきたが、どれもドラマだったらいいものの映画となると...と感じる作品ばかり。
本作もその一種で、総集編の域を脱しておらず、わざわざ劇場版に起こす必要があったのか?と疑問に思う。編集も脚本もかなり雑で、筋はよく出来ているのだけど、支離滅裂、粗い展開で見にくく、映画としてのまとまりが非常に悪く感じた。ドラマであればナレーションやテロップでの説明も特段気にならないのだろうけど、スクリーンで見るとなんだか安っぽく見えちゃう。
目的である、豪華キャスト陣は素晴らしかった。森田剛も高良健吾も安田顕も、やっぱり上手いよなぁ。このドラマを描くにあたって必須俳優だったと思う。ただ、彼らの力を最大限活かしきれてない演出だったのは、あまりに勿体ない。んー、なんというか、淡々としすぎているというか、状況を説明するのに必死になりすぎているというか、おかげでインパクトがなく、あまり印象に残らない映画だった。スローテンポなのに展開は急だし、間が悪いのに駆け足だし、とにかく居心地が悪かった。
しかしながら、NHKが制作したというのには驚き。マスメディアの必要性が疑問視される中で、日本トップの放送局がこれを取り扱うのはかなり攻めているし、いい試みだと思う。第二次世界大戦期に新聞やラジオが実際の情勢とは違う、偽りの情報を国民に発信していたというのは有名な話だが、ここから国によるメディアの抑制が始まったと考えると、過去のことでは片付けられない重大な問題であり、何が正しく、何が間違っているのか、しっかり見極め判断するのは我々国民にあるんだと、改めて感じた。ここまでするなら、もっと踏み込んでより強いメッセージ性が欲しかったけどね...。
まあ期待していなかったからそこまでガッカリでは無いけど、お金儲けだけのために劇場版を制作しているのなら、今すぐ辞めた方がい。総集編ではなく、しっかり劇場版として、物語を再構築できる力量がなければ作る意味が無い。せっかくいいテーマを扱っているのだから、手を抜かずきちんと作り上げて欲しいな。