「逃亡の果て」このろくでもない世界で U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
逃亡の果て
星の評価は役者の没入度に対してだ。
物語は、どう理解していいのかは分からない。
この作品を見て何を得ればいいのか。
18歳の少年が陥っていく底なし沼のような話ではあるのだが…ラストに至り急な方向転換にも思え、結局はリセットするしかないというか、捨てなければならないというか、もっと早く逃げ出すべきだったのだろうなと思う。
元凶は酒乱の義父ではあるのだけれど、彼がこの螺旋に絡め取られるまでに何度も持ち直せる機会はあった。最初の躓きである義父に立ち向かうべきだったとは思う。
よく分からないのだ。
この世界観が。
スマホは普及しているから現代なのかとも思う。なのだが服装や乗り物は前時代的なものも多く、コレらが貧困を表してるアイテムなのだとしても、現代の韓国の暗部なのだろうかと首を傾げる。
隣国の事はわからない。
こういう現状であったとして、何を訴えようとしているのかもわからない。
登場人物達はすべからく底辺に生きる者達で、それを食い潰していく上流階級の存在もしっかり描かれる。
格差という言葉では足りないくらいの差が描かれていく。
たまに出くわすけれど、どういう意義とコンセプトの上で、この手の作品は世に出てくるのだろうか?
元々お互いに好意を描いていたであろう、主人公とその義妹の空気感とかエピソードは嫌いじゃない。
全てを捨てて2人は街から脱出するってラストだ。
自死に等しい最期を遂げた兄貴分の心情も分からなくはない。
だが…トータル的に何を受け止めれば正解なのかがわからない。ただのエンタメのようにも思うし、そうじゃないような感じもする。
韓国という文化や人を理解すれば、この作品のコンセプトも理解できるのだろうか?
俳優陣は、やはり見事だった。
彼らが没入していく深度が観客にも伝播していくようで…主人公の四肢に纏わりついていく黒く悪臭を放つ泥のような触手をずっと感じてた。
物語は好きじゃないけど、俳優陣は素晴らしかった。
◾️追記
この直後に「大いなる不在」を見て思う。
本作だけではないのかもしれないけれど、色味が濃いし、画面が暗い。
まるで色味とかからも、作品世界へのアプローチをしているようにも思えた。
日本映画の基準として「作品は見やすくする事」って項目があると仮定し、画面は明るめにっていう常識があったとして、韓国にはソレがないようにも見える。
作り手側の主張が100%投入されてるような…。
本作を見た後の「大いなる不在」は何だが色が薄いって感じで、物語が始まるまでに作品のカラーを察知する材料が乏しいような印象だった。
深みって言うのかなぁ…韓国にはソレがあった。
たまたまかもしんないけどね。