劇場公開日 2024年11月15日

「これが令和の踊る」室井慎次 生き続ける者 103さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 これが令和の踊る

2025年5月28日
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鑑賞方法:VOD

あの頃の『踊る』ではない。事件解決に向けた緊迫感あふれる筋立ても、ヒーローの躍動もここにはない。だがそこには、人生を噛み締めながら歩む一人の男の背中がある。静かに、しかし力強く、大地を踏み締めるように、人生の清算に向き合う男の姿が描かれている。それが実にいい。

もし、かつての『踊る』を期待してこの作品を観たなら、評価が下がるのも無理はない。しかしヒューマンドラマとして、これは充分に味わい深い作品だ。仮に自分が20代で観ていたら、きっと物足りなさを感じていたと思う。だが50歳半ばを超えた今なら、室井の気持ちがよくわかる。そうした視点から描こうとした監督の意図も、痛いほど伝わってきた。

『踊る』をこの深みのある領域にまで引き上げたスタッフに、心から拍手を送りたい。長年『踊る』を追いかけてきたファンとしても、納得のいく一作だった。あまりにも評価が低いのが、本当に残念でならない。なお、私は前半・後半を一気に観たことも、最後に付け加えておきたい。

103
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