「さらば、踊る」室井慎次 生き続ける者 ムラカミさんの映画レビュー(感想・評価)
さらば、踊る
前後編通して、室井さんと子供たちを取り巻く登場人物たちに終始共感できず違和感を感じる。人が成長していく過程を描写するのにそんな嫌な人間を出さなくてもいいのではないか。ギャグも笑いどころがわからないし、話の内容もツッコミ不在の漫才でも観ているかのようで正直面白いとは言えなかった。だが久しぶりに柳葉さんの演じる年を重ねた室井さんが観れるだけで嬉しかったし、室井さんが子供達と幸せに暮らしてたまに事件に関わっていく、そういう展開はまあいいかと思っていた。
だが後編の最後で絶望した。
室井さんが死ぬとは思わなかった。
作品の中で一番好きなキャラクターなのもあり、信じられなかったし、信じたくもなかった。もしかしたら踊るお得意のミスリードかとも思ったがパンフレットにはハッキリと亡くなったと明言されている。
覆らない事実に公式SNSの宣伝に疑問が湧いてくる。室井さんの名言を取り上げて盛り上げているつもりなんだろうが、鑑賞後に見るとどの名言もあの結末だと虚しくなるものばかり…その中でも「死んだんじゃないのか?」というセリフをわざわざ選ぶのは無神経ではないのか。謎のクイズもこの状況でやることか。
それに異例の先行上映、早い段階で青島出演のネタばらし、ポストカードの配布、青島主演の新作が2026年に決定という発表、果てには特別映像上映が追加って…。観客動員数を増やす為の巧みな戦略にある意味流石だなぁと思ったのですが、その巧みな技を少しでも話し作りに活かせなかったのかが悔やまれる。内容が最高だったら特典がなくても何回でも鑑賞するのに…
自分はもう二度とアレを観に行く気力はない。
新作のN.E.W.のロゴの下に室井さんの眉間のマークがあるのも、青島に意志を引き継いだという印なのかもしれないが、せめて全身のシルエットとかにして欲しかった。なんで眉毛?なんというか全体的に死を軽んじてるというか馬鹿にしているように感じ、公式のやり方に全て神経を逆撫でられている気持ちになる。
映画も毎回クオリティが落ちてきてはいたものの、いつもの踊るメンバーの元気な姿が見れたからいいかと今までは思っていた。でももう観る気力も信用もない。再来年公開予定の新作映画はまだ出演者もハッキリと決まっていない状況みたいなのでそれ次第で脚本も変わってくるのだろうが(それとその時のノリとテンションで)、納得の出来る結末はもう与えてはもらなえないだろうと確信した。
自分も今回の映画で素直に泣けて、いい映画だった!と楽しめる側の人間でいたかった。まさか血の気が引いて、今までの人生の中で一番最悪な映画だった!となるとは……。
今はせめて青島の結末がより良いものになる事を祈るばかりです。
あぁ…どんな形でもただ生きててほしかった