「“踊るレジェンド”は生き続けられるのか…?」室井慎次 生き続ける者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
“踊るレジェンド”は生き続けられるのか…?
あっという間に一ヶ月。『室井』の後編公開。(先行上映は予定付かなくて行けなかった)
登場人物や設定の紹介のみ、2時間何も起きずにただだらだら、事件も話も中途半端、全ては後編で…悪どい商法。
…などなど賛否あったが、個人的には思いの外悪くなかった前編。と言う訳で、期待が掛かる。
何しろ後編は回収しなければならない事がいっぱい。
漢・室井は全てにケジメを付けられるのか…?
ところがところが、先行上映レビューが低評価でびっくり。今は少し持ち直した感あるが…。
それでもの期待と一抹の不安。この目で。
見終わっての率直な感想。
今回も悪くはなかった。悪くはなかったけど…。期待以上のものは無かったかな…。締め括りに相応しいカタルシスにも欠けた。再三、悪くはなかったけど…、前編以上の賛否も分かる。
不満点の方が多くなってしまうかもしれないが、各々感想を。
まず、こりゃもう完全に『踊る』じゃねぇ。
あの音楽が聞こえてきそうな“秋田の国から”。
前編以上のじっくりドラマが展開。
前編ラストの火事。犯人の察しは付いているが、被害届は出さないと言う室井。
里親としてどう向き合うか。
さらに、時折襲う胸の痛み。ここで何となくオチが…。
初恋にときめくタカ。しかし、初恋破れ…。室井の古いレコードを聴いて涙するシーン、私は何の映画を見せられているんだろうと…。
回想シーンに“母親”登場! さすがに老けたキョンキョンだけど、娘の心に圧をかけ、母親の言う事に応えようとする杏だけど…、今回もっとキーパーソンになるのかと思ったら、一回猟銃を撃っただけで萎縮し、急にイイ子ちゃんに。母親からの呪縛も解けてないような…?
村八分的な目に遭っていた室井。が、そのいざこざもあっさり解消。
じっくり煮込み過ぎて逆に薄味になっちゃったような…。この“あっさり感”、これだけではないのだ。
今回の“室井2部作”の発端とでも言うべき死体遺棄事件。
何だかんだ『踊る』の映画。『2』を彷彿させる犯人と思われる電話も掛かってきて、いよいよ事件サスペンスを期待。
えっ…?
犯人あっさり逮捕。結局お前かい!
この死体遺棄事件の方も松下洸平演じる桜の台詞のみで解決報告。
もう一度。えっ…?
って言うか、松下洸平の役も何だったの…?
前編はタカのドラマだった。前編ラストでリクの父親が刑期を終えて出てきて、今回はリクのドラマ。
児童相談所の愚かな判断で、リクを更生した父親の元へ。
父親との再会を喜ぶ一方、怯えも見せるリク。
室井は父親と「二度とリクをぶたないで下さい」と約束し、断腸の思いで親元へ返すも、案の定…。
戻ってきたリクを追い掛けてきた父親。
何を隠そう、ここが今回一番のサスペンスシーン。多分。
ならば終盤、サスペンスフルに尺長く展開するのかと思ったら、ここもあっさり…。
事件に大きいも小さいも無い。でも、でもねぇ…。
もう一つ、要的な事。
室井が“あの男”と果たせなかった約束。
室井がそれにもう一度、どう向き合うかが今回の“室井2部作”の重要ポイントだったと思う。『踊る』との繋がりも強く。
突然また筧が現れ、あなたの思いを継いだ案を始動しますって…。
室井さん自身が何か動いてやるんじゃなかったの…??
その室井さん、終盤リク父によって外に放り出されたワンちゃん探しに、吹雪の中を…。
唐突の遭難事件が雑過ぎ。
この展開や胸の痛みからもう察しは付く。と言うか、観る前から。
やっぱり、こういうオチなのね…。
ギバちゃんの20数年越しの望みが叶えられたのかもしれないけど…。
室井=ギバちゃんの熟された熱演。室井語録。
タカやリクを引き取り、心配したり悩んだりする事が楽しい。
国見との対面。被害者や被害者家族の苦しみを訴える。
珍しく酔っ払った時、タカとリクに語った“夢”。
これらは良かった。
正しい事をやる。
自分を信じ、やりたい事をやる。ラストのタカ・リク・杏にも通じる。
またそれは、監督・本広と脚本・君塚が賛否覚悟で描きたい事を描いた訳でもあるのだが…、製作側のやりたい事とファンが見たいもののズレを感じた。
室井個のドラマと終着としてはこれでいいのかもしれないが…、
『踊る』の映画としては、どーなのよッ!?
“踊るレジェンド”のフィナーレとして、これで良かったのか…?
そしたら、最後の最後で噂通りのサプライズ!
個人的には、いつぞやの“お誘い”の二人できりたんぽ鍋を食べるシーンが見たかったが、何だかんだ出てくれた。
おそらく見た人は、本編よりこのシーンの方が盛り上がっただろう。そういう自分もだけど。
そうなると、つい思ってしまう。
この“室井2部作”は何だったんだろう…?
和久さんはおらず、すみれは警察を辞め、青島は老け、献花捧げられた室井の最期を描いてまで、“踊るレジェンド”は続くのか…?