劇場公開日 2024年11月15日

「人間・室井慎次」室井慎次 生き続ける者 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間・室井慎次

2024年11月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

単純

壮大なプロローグとなった前作から1か月。楽しみにしていた後編がいよいよ公開されたのですが、劇場に足を運んだ公開2日目の昼の時点での評価がまさかの2.9!何かの間違いではとの疑念を抱きながら、鑑賞してきました。

ストーリーは、警察を退職して故郷の秋田で事件関係家族の二人の子どもの里親として穏やかに暮らしていた室井慎次が、自宅近くで他殺死体が発見されたことで捜査への協力を求められる中、かつて湾岸署占拠事件を起こした殺人犯・日向真奈美の娘・杏も転がり込んできて、室井の生活は少しずつ揺さぶられ始めるというもの。

鑑賞後の率直な感想としては、全然悪くないです!終盤は涙の乾く間がなく、必死に声を抑えていました。正直、まさかの結末にかなり驚きました。タイトルの意味はそういうことだったのかと納得です。里子の一人一人に、やさぐれた若者たちに、良好な関係が築けなかった地元住民に、警察組織で奮闘するかつての仲間たちに、室井の思いはしっかり伝わったことと思います。そして、その思いはそれぞれの胸でこれからずっと生き続けることでしょう。

それにしても、ラストでのまさかのサプライズにさらにびっくりします。ここにきてシリーズ再始動となるのでしょうか。それはそれで楽しみですが、下手な作品を作って汚点とならないか不安に思う気持ちもあります。そういえば、室井さんの愛車のナンバーは「2294」だったのですが、まさか「続くよ」ってことでしょうか。”室井の思い”と”踊るシリーズ”が続くというダブルミーニングだったのでしょうか?!

ただ、低評価をつけたくなる理由もわかります。まずは期待とは異なるテイストと展開です。前編であれだけ煽った湾岸署立てこもり事件との因果関係が薄すぎます。日向杏の洗脳を始めとする日向真奈美の描いた壮大な計画というのも決定的な描写がなく、事件が解決してもなんじゃこりゃの展開と言わざるを得ません。

本二部作を通して、血のつながりを超える絆を描こうとしているように感じ、そのために猟奇殺人犯とその娘という関係、室井との過去の因縁が必要で、日向杏というキャラを登場させたのだと思います。そして、杏を母の呪縛から解き放つ存在として室井を描きたかったのでしょう。その意図はわかりますが、それなら前半で日向真奈美をあんなに強く印象づけなくてもよかったのではないかと思います。おかげで、観客は全てが日向真奈美の描いた筋書きだと思い、この後編に落胆したのではないでしょうか。

また、室井の善なる人間性を演出するためとはいえ、周辺人物の様変わりが激しすぎます。室井に冷たく当たる地域住民や店内で暴れる若者たちの手のひら返しにびっくりします。もう少し、地元住民との関わりを描かないと共感しにくいです。逆に里子との描写はとても多く、バランスの悪さを感じます。

とはいえ、単純な自分は終盤はまんまと泣かされどおしで、鑑賞後の後味は悪くないです。なんなら、今後もますます期待してしまいます。警察ドラマとしてではなく、室井慎次のヒューマンドラマとして観れば、十分に楽しめるのではないでしょうか。

主演は柳葉敏郎さんで、シリーズ集大成として熱い演技を披露しています。脇を固めるのは、福本莉子さん、斎藤潤くん、前山くうがくん、前山こうがくん、松下洸平さん、矢本悠馬さん、飯島直子さん、小沢仁志さん、木場勝己さん、筧利夫さん、加藤浩次さん、稲森いずみさん、いしだあゆみさんら。

おじゃる
ちゆうさんのコメント
2024年11月11日

そもそも警察を辞めてる時点で警察ドラマにはならないです。前編でサスペンス方面へミスリードして置いての後編ヒューマン路線と解釈したらそれでいいと自分は思います。

ちゆう