「真の、新たなる希望。」室井慎次 生き続ける者 キャプテン・ポップコーンさんの映画レビュー(感想・評価)
真の、新たなる希望。
前作『敗れざる者』は『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』からの12年間の人生が詰まってた。そのときのモヤモヤが解消され、みなの人生が詰まっていて、個人的には腑に落ちた。
今作は前作よりも、人間を描いていたのではないだろうか。
予想よりも、警察描写は少なく、秋田県警内での事件はあっさりと幕を閉じた。
その部分は、往年の「警察ドラマの踊るらしさ」としては少なく感じる方もいるだろう。
まあ、犯人のアジトに突入する際、銃器対策部隊?的な部隊が突入。大袈裟に感じるかもしれないが、18年前に、拳銃で捜査員(すみれ)が撃たれているのだし、殺人事件も起こしていることから、あそこまでの準備はするのではないだろうか。
現実の世界での特殊詐欺も結構凶悪だし。時代性もあって良いかと。
しかし、前作から登場した地域に住むものたちの設定回収は上手かったと思う。
リーダー等、組織論なこと。
他人の幸せを羨ましくなる人間性。
排他主義。
この辺も上手かった。
日向真奈美も、どこかで一般的な日常を望んでいたのかな、と思った。
そう思うと、結構寂しい人だな、と。
室井さんがシンペイを探すあたりから、結末が見えていて涙が流れた。
本編中で一度もセリフで語られない「死」。
しかし、描写だけで何が起きたのか、
今後、みんなは室井さんの想いをどうやって背負っていくのか。
すべて悟られていて、納得した。
シリーズ全体で描いていた「健康診断」の大切さの凄まじいオチだと思う。
秋田県警で「青島と室井の約束」「和久さんと吉田副総監の想い」のモデルケースをつくるという流れも、かなり地に足ついた流れだと思う。新城秋田県警本部長と沖田警察庁官房審議官なら、実現できると思う。
そして、すみれさん。後遺症に苦しんでいるけど、生きていてよかった。
やっぱり、警察辞めてたんだね。それも人生。
●子どもたちについて
高校生組二人の成長もよかった。
今後、タカが国家公務員I類として警察庁に入庁して、シリーズとして次のフェーズとして受け継がれる流れも期待できる。
年齢的に和久さんのポストになるであろう青島とのタッグも悪くない。
杏も、途中から母性の一面も見られ、児童関係の仕事や、お母さんのように医療の道に進んで“きちんと人の健康を守る仕事”についてもおかしくないなと思った。
なにより「猟奇性が遺伝する」みたいなキャラクターにならなくてよかった。
リクの物語も、里親の難しさ、歯痒さも描かれていて、
初対面のとき、ナマハゲですぐ心を開くものか?と感じたりもしたが、子どもって、結構直感で「いいオトナ、悪いオトナ」を見分けるチカラがあるから、意外と自然なんだろうと思う。あのときだけ、室井さんからギバちゃんだったな。
●次章?
そして、ポストクレジットシーン。
なんとなく想定内だったし、エンディングで記載されていた、本編で使用された記憶のないサントラ。
あ、こういうことか、そうだよね、と思ったし、感極まった。
ここでシリーズが終わってもいいし、次も期待できる。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』のときに、「新・踊る大捜査線」と言われていたが、あれはオトナの都合をすごく感じていた、実は。もちろん、好きだけどね。
でも新作2部作は、亀山さんはじめ、製作陣が本当に描きたかったものを製作できたのではないだろうか??
シリーズが大きくなるにつれて、物語が大風呂敷になっていったが、やっぱり「踊る大捜査線シリーズ」は人間の物語、社会性あるドラマだと思うから。「刑事って地味ね」、そう地味なところ(事件とかではないってこと)にフォーカスした面白さが「踊る」なんだと思う。
いろいろ言い分が出てくる映画だとは思うし、中途半端だったり、整合性が取れないところもあると思う。最初のプロットとは変更になった部分、変えた部分、変えざるを得なかった部分があるだろうし。
そもそも、室井慎次が12年前のあと、どういう選択をしたか、どう生きたか、を描きたかったわけだから、これは室井さんの物語。時間的に、少し中途半端になったりするのは仕方がない事なんのかな、と思う。
これが最善なんじゃないかと。
たぶんね、本格的なヒューマンドラマを作ろうとしたら、つくれたと思うの。だけど、そうしたら、踊るぽくないって言われるわけじゃん。まあ、踊るのキャラクターが出る時点で自分は「踊る」だって思っているけど。
うーん、ヒット作って難しい。
それぞれの正しさがあるわけだし…。
でも、本作は、個人的にシリーズ全体を通して、腑に落ちる展開だった。
ありがとう、室井さん。
もの凄く同感なレビューでコメント失礼します!(代弁ありがとうございました笑)
細かいところにツッコミどころはあれど、室井さんの人間性が凄く伝わって来るよい映画だったと思います!