「室井慎次という男の総決算、そして…」室井慎次 生き続ける者 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
室井慎次という男の総決算、そして…
"THE ODORU LEGEND CONTINUES" 第4作。
通常スクリーンで鑑賞(先行上映)。
本公開前なので、ネタバレを避けて感想を記す。
そんなに風呂敷を広げて大丈夫かと少し心配になった前編だったが、その風呂敷を見事に畳む素晴らしい後編だと思う。
過去作は全て本作のためにつくられたのではないかと思いたくなるほど、様様な要素が重層的に絡み合い物語を紡ぐ。
子供たちや村人たちと室井の関係が織り成すドラマも(強引さはあったが)見事な着地を見せ、感動させられた。
室井慎次と云う男の人生の年輪がそのまま彼の言葉や想いに反映され、とめどない涙を誘う。まさに総決算だった。
[追記(2024/11/30)]
Xのキャンペーンでムビチケが当選したので2回目の鑑賞に臨んだ。正式の公開日を迎え、公式からかなりネタバレされているので、ネタバレ有りの感想を追記したいと思う。
本編とは全く毛色の違うヒューマンドラマである。踊るシリーズの懐の深さを思い知った。間もなく30周年を迎えるだけにもはや登場人物たちの人生を追い掛けている気分になる。
夢破れ、警察を辞めた室井だが、ただ敗れたわけではなかった。青島との約束を胸に、挫折しそうになりながら己が正義と信じる道を歩もうとする。なんと強い信念なのだろうか。
子供たちとの交流も見応えがあった。もう少し掘り下げが欲しいと思う部分も無いでは無かったが、室井の人柄に触れ成長していく彼らと、室井との交流が微笑ましく感動的だった。
日向杏を演じた福本莉子の、日向真奈美を彷彿とさせる表情や演技が素晴らしかった。カラコンかもしれないが、ふとした時の空虚な目がかなりサイコで、ゾッとさせられた。
てっきり本作のメインヴィランかと思っていたが、母親に洗脳され、他者を信じず苦しめることしか知らなかった彼女が、室井との交流を通して更生するとは少少意外に思った。
坂道ファンとしては、丹生明里のかわいさをスクリーンで堪能出来るのは非常にありがたかったが、タカに思わせぶりな態度を取るとんでもない役だったことに驚かされた。
室井の死は、予告編から匂わされていたので覚悟はしていたが、心の片隅では「死んだんじゃなかったのか?」オチを期待していた。だかちゃんと室井の最期が描かれ涙が溢れた。
青島との約束を果たせなかった後悔を胸に第二の人生を歩み始めた彼の死は、登場人物を一切英雄視してこなかったこのシリーズの一貫した主義の到達点のように思えてならない。
しかし、室井の想いは生き続ける。エンドロールの松山千春「生命」に温かな涙が流れた後、ポストクレジットシーンで青島が登場した瞬間、それは歓喜の涙に変わったのだった。
踊るはまだまだ続く。青島の後ろ姿に被って表示された公式宣言を、ただただ信じて待ちたい。踊るシリーズの真の集大成を。青島と室井の約束が、見事果たされるその日を。
[以降の鑑賞記録]
2024/11/30:TOHOシネマズ西宮OS