「予想を裏切る狂気と笑撃の復讐劇」ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 予想を裏切る狂気と笑撃の復讐劇

2025年9月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

驚く

■ 作品情報
監督はモーリッツ・モール、脚本はタイラー・バートン・スミスとアレンド・レメルス。製作はサム・ライミ、ザイナブ・アジジなど。主要キャストはビル・スカルスガルド、ジェシカ・ローテ、ミシェル・ドッカリー、ヤヤン・ルヒアン、アンドリュー・小路、ファムケ・ヤンセン。

■ ストーリー
文明が崩壊した終末世界を舞台に、狂気の女帝ヒルダ・ヴァン・デル・コイが支配する腐敗王朝が存在する。少年ボーイは家族を虐殺され、そのショックで声と聴覚を失ってしまう。絶望の淵にあったボーイを導いたのは、幼い頃に夢中になったゲームの主人公が語りかける「内なる声」だった。その声に突き動かされ、彼は謎の男シャーマンのもとで地獄のような修行を積み、「沈黙の殺戮者」へと覚醒する。年に一度の「粛清の日」の前夜、家族の復讐を果たすべく、ボーイは暴力に満ちた世界へと足を踏み入れ、やがて自身の運命と向き合うことになる。

■ 感想
冒頭で、言い訳程度の説明で舞台を整えたかと思えば、すぐに主人公の特殊な境遇を描いてみせ、全体の建て付けを捉えさせます。その話運びは、テンポがよいといえば聞こえがいいですが、実際には情報が断片的すぎて疑問噴出です。観客を嘲笑うかのように置き去りにしてマイペースに話を運ぶ、そんな姿勢がいっそ清々しいです。しかし、この序盤の“不親切さ”こそが、終盤に向けて見事に回収される伏線の妙であり、その構成には驚かされます。

また、全編を通して繰り広げられるバイオレンスアクションは圧巻の一言です。主人公ボーイのアクロバティックな動きはもちろん、ボーイを鍛え上げたシャーマンの異彩を放つ存在感が強烈なインパクトを残します。彼の存在なくして本作は成立し得なかっただろうと思わされます。そして、何よりも本作を特別なものにしているのは、ボーイのモノローグが絡むシュールなブラックユーモア。血みどろのグロテスクなシーンですら、彼のモノローグが差し挟まれることで、思わず笑ってしまうギャグに見えてきます。

ただ、ボーイとシャーマンという核となる二人の関係性のアイデアは素晴らしいものの、周囲のキャラクター、特に女帝ヒルダの真意や、この世界の背景描写はやや不足していると感じます。そのため、物語全体への感情移入が深まりきらなかった点は惜しまれます。しかし、そもそも深く感情移入することよりも、アクションを楽しむための作品だと割り切って観ればいいのかもしれません。ちなみに、エンドロール後にもちょっとしたおまけがありますので、ぜひ最後まで席を立たずにその余韻に浸ってください。

おじゃる
PR U-NEXTなら
映画チケットがいつでも1,500円!

詳細は遷移先をご確認ください。