劇場公開日 2025年2月14日

聖なるイチジクの種のレビュー・感想・評価

全113件中、61~80件目を表示

4.5壊れ行く家族、壊れ行く国家

2025年2月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

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レント

4.0映画づくりの勇気と覚悟

2025年2月21日
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モハマド・ラスロフ監督が母国イランで秘密裏に撮影し、国外脱出後に完成させた作品とのこと。前半のほとんどが屋内シーン、後半は人里離れた荒れ地というのも、そうした事情からなのだろう。
現状のイラン社会に対する親子世代の意識の違いが大きなテーマだが、その間に位置する母親が前半の主役に見える。体制維持のため本意でない使命に苦悩する父親の姿も描いているが、影は薄い。
ヒジャブを発端とした抗議活動の実際の投稿動画と合わせて、姉の友人の顔の傷口から散弾を取り出すシーンは、痛ましく、胸が締め付けられる。銃が紛失して、疑われた母親と姉妹が、父の友人(おそらくこれまで多くの無辜に嘘の証言をさせてきた)の尋問を受けるシーンも、リアルで恐ろしい。
と、ここまでは傑作の雰囲気なのだが、テヘランを離れてからの後半は、トーンが変わって、父親の家族に対する狂気めいた行動が、まるでホラー(シャイニング?)のように描かれる。イランという国家と父親をダブらせる意図は理解できるが、ちょっと醒めてしまった。
監督はイランを脱出できたが、出演者やスタッフは国内に留め置かれて、取り調べを受けたとのこと。体制に異議申し立てする映画づくりが、いかに勇気と覚悟がいるものか、思いを寄せつつ、それは決して他人事ではないとも考える。

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山の手ロック

4.5マクガフィンとしての拳銃

2025年2月21日
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2024年。モハマド・ラスロフ監督。イランでまじめに宗教裁判所勤務の公務員を務めて来た真面目な男性と妻、その娘二人。男性はようやく調査員に昇進して判事への道も見えてきたが、ちょうどそのころ、イスラム教の女性蔑視に抗議していた若い女性が死亡したことをめぐり、警察の暴行を疑う市民たちの抗議運動が過激化。男性は司法の場で抑圧的な体制に従って働かざるをえなくなり、そのツケが家族の不和へとつながっていき、、、という話。
イスラム教独裁体制であるイランにおいて、もっとも抑圧されているのが女性。この物語では良識的だった男性もまた抑圧側に徐々に魂を売っていく姿が痛々しいが、その被害を家庭内の女性たちがもろにあびていく。後半ではお約束どおり一番若い少女をはじめとした女性たちの反乱がおこっていくのだが。
そこで、拳銃。自宅で拳銃を紛失した男性は出世に響く失態と考え、マッチョな家父長としての「本性」をあらわにしていく。その意味では拳銃は決定的に重要な意味を持つ。しかし、最終的に発射される銃弾は意味をなさないので、拳銃がなくなったこと、または、拳銃を持ち歩いていること自体で画面にみなぎるハラハラドキドキの緊張感のためのアイテムだ。まさにヒッチコックが言うところ「マクガフィン」。
実際の事件を元にしており、抗議運動の様子などはスマホで撮られたらしい実際の映像も多数引用しているようだ。イランの人々に光が指すことを祈りたい。

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文字読み

3.5終盤面白い

2025年2月21日
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吉泉知彦

4.5ヒジャブと拳銃の象徴性。

2025年2月21日
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前半のヒジャブデモに伴う、家族に漂う不穏な空気感と、序盤に出てくる拳銃の悲劇が後半への繋ぎとなって一気に終盤に流れ込む展開。
前半はスマホで撮影された凄惨な動画の数々に緊張感ある展開。後半はテヘランからひとけの無い郊外にロケ場所が変わるあたりに諸般の事情が伺える。
イスラム法を下敷きに国や指導者と家長の相似関係を巧みに操りながらラストとデモ動画をセットにしたカタルシス。
気分としては映画2本分観た感じで、シナリオの旨さに感心してしまった。

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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

3.0ラストは、観客は勿論、登場人物達も予測できない

2025年2月20日
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母国の弾圧に屈せず、映画を完成&上映にこぎつけたことには敬意を表します。
尺がもう少し短ければより説得力が増したと思います。

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sugar bread

4.5

2025年2月20日
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難しい

この監督は絶対観る!
と決めていたので、仕事帰りでも3時間耐えて観れました笑

イランの現状と
銃が無くなり
家族の仲の亀裂
父の本性、、、

3時間で最初の印象と最後の印象が変わる映画ですね

テーマは一貫してます

是非皆さん観てほしい

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アプソ

4.0なんとも苦しい映画

2025年2月20日
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素晴らしいの一言に尽きる。前半は国家の不条理を描きこんなにも大変な国家は嫌だな〜と思っていたが、後半からは家族のたった四人で国家のなぞりを見せている凄いメッセージ性の高い作品。
監督は国外追放されて遠隔で一部を演出したと聞いてそれも凄い。
生きるか死ぬかで映画を撮影して公開するのは、こんな国家ないだろう、自分の国ではないだろうと思わせといての家族が国家。
身に沁みて日頃から生きなければならない。

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るい

4.5衝撃的な面白さ。再び地獄に向かう世界を想う。

2025年2月20日
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イランの政体は単純な宗教的強権国家ではない。憲法はもちろんあるし直接選挙も実施されている。一応、三権分立も形作られている。ただ最高指導者(現在はハメネイ師)が君臨し、監督者評議会とか公益判別会議とかイスラム法に基づくジャッジメントを執行する機関が三権に常に介入する。
しかしながら世俗勢力と宗教勢力が常に妥協を図りつつ、わずかづつでも世俗化が進んでいくのがイランらしい現実主義ともいうべきものであってアフガニスタンのタリバン政権やサウジアラビアの王権主義とは異なる。
この映画も最近のヒジャブ闘争を下敷きにして(実際の映像もかなり使われている)イラン社会の分断を描く。ヒジャブ闘争では何人もの若い女性が命を落としておりマサ・アミニさんの名前は実際に映画でも取り上げられている。なお、イマンが隣の車線に停まった車中の欧米風身なりの若い女性をじっと眺めるシーンがあるが彼女はやはりヒジャブ闘争で命を落としたニカ・シャカラミさんによく似ている。監督からのメッセージというべきものだろう。
さて、イマンは検事局に勤めていて調査官に昇格した。「判事に昇格する」との翻訳は恐らく間違いであって予審制度があるのだから予審判事を目指しているということなのだろう。公開の裁判を経ることなく死刑まで宣告できる訳で(上訴は一応できるようだが)恨みを買ってもおかしくはない。一方でSNSが爆発的に拡散し、仮想敵を勝手に設定して何の権限もないのに私的制裁を加えようとする動きが世界的にものすごい勢いで増えてきている。(黒沢清の「クラウド」を連想した)
イマンはその対策として役所から銃を持たされるのだがこの銃が家の中で見当たらなくなることによってのっぴきならない立場に追い込まれる。
二重三重の板挟みとなった彼は家族を疑い目的も明確ではない支離滅裂の行動に出る。といったところで後半30分ほどは社会の分断が家族にまで及びまさしく地獄絵図が繰り広げられる。
我々はやはり地獄に向かっている。もはや逃げ道はないのかもしれない。民主主義国家ではこんなことは起こらない、と楽観的に考える愚を改めて考えさせられた。

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あんちゃん

5.0命がけの作品

2025年2月20日
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監督のモハマド・ラスロフは、本作制作後に禁固8年、むち打ち刑、財産没収の実刑判決を受けて、国外脱出をした。

ひとつの家族を通してイランにおける強権的なイスラム体制と、自由を求めて反発する若者という対立の構図が、ドキュメント映像を交えてとてもリアルに描かれている。

イラン社会の閉塞感がすごい。21世紀になっても未だに神による統治とかやってるの終わってる。500年前の中世かよ。
国民の思考停止振りと、神への依存と服従という脆弱なメンタリティが痛すぎる。ヘジャブかぶらされてる若者が反発するの分かる。一方で、無実の者を死刑台に送る体制側を象徴する父親の苦悩ぶりもちゃんと描かれてる。

政治宗教的な内容なんだけど、映画作品としても良く出来てて、切り裂くような台詞とかヒリヒリするような緊張感とか、エンタメとしても面白い。

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CR7

3.0前半と後半の急変についてはよくできてるが、最も印象に残ったのは恐ろしい場面かも。

2025年2月20日
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悲しい

怖い

前半については、まあ、こういう系の映画によくあると言えばよくある、イスラムの政府の恐ろしい圧力に怯えてる恐怖、不自由さ、残虐さ、何が起きるか不安に緊張し続ける。
出世してもそんなに気分悪く過ごし、家族関係も悪くなるようなら、そんな仕事!続ける意味ある?!みたい思うがそれ続けることでどんどん病んでいくんだなあ・・・あんまり表情変わらないお父さんだから、内面は相当壊れていってたのか。
お母さんがイスラムらしく、凄い夫をサポートする真面目過ぎる妻で、娘についても頑固一徹かと思いきや、娘たちの言うことも何気に聞いていたり、黙ってサポートしてくれたりするところには表面には出さない(出せない)ものの、その社会の不条理や、何を優先すべきかわかっている強い母で感心した。イスラムの古い考えに縛られているだけなら、彼女のような行動はとれないはず。
押さえつけられていても、着実に、イランの変化は進んでいると思った。
途中の暴動がらみの場面、恐ろしすぎてめちゃくちゃ印象に残った。
散弾銃についてもよく知らなかったし。あんなの今でも警察やら政府が鎮圧用で人に向けてるなんて恐ろしすぎる。
後半、前半あっての流れではあるものの、だいぶ様子が変わってくるが、
前半の感じのままだとよくある映画のひとつになってしまうから、あえて、意外な展開にしたのか(つながりあるから意外ともいえないが)
もしかしたら、後半部分みたいな話も作ってみたくて、二つの感じを連結させたのか?ってくらい、タイプが違うのは、全体的に怖い話なのだが、ちょっと、おもしろ・・・
途中も、普段の自分たちの生活の中では想像できないような世界の話なので、先がどうなるのか怖がりながらも気になり、集中して見れた。
長くてトイレ行きたくなったがw
後半の展開のせいで、結構印象に残る映画になったような。しかしなんでそういう逃げ方するの?とか、娘の活躍がタフで賢過ぎてまるでアクションヒロインもののような感じに。
防寒のために透明フィルム被ってるシーンは、一見そこに放置されていた殺人死体かと思ってぎょっとした。
後で予告編見たが、予告編でよくある、つなぎ方がめちゃくちゃだし、この映画宣伝の説明で、この映画の内容はほとんどわからないので、気になる人は、迷わず見たらいいと思う。

映画の中でも、そんなことあり?ひどすぎる、ってことは写されているが、実際、この映画の関係者の自由が奪われているっていう、ありえないようなことも現実に起きているので、そういうのを知る人がひとりでも増えることは、意味あると思う。

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しゅま子

5.0決死の覚悟で作られた映画

2025年2月19日
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アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされ、日本でも先週から公開され(上映館がかなり少ないが)ジワジワと評判高まってるようなので鑑賞。かなりの長編でしたが前半はイランのちょっと豊かな家庭の情景とスマホ画面で差し込まれる実際のデモや暴動のシーンに引き込まれ、後半は拳銃紛失後の捻れた家族の関係が崩壊に向かうサスペンスに打ちのめされ、衝撃のラストで息が止まってしまいました。
夫のイマンは20年真面目に仕事し判事手前の調査官になり家族にも広い官舎に住まわせる事が出来たが、機械的に死刑を宣告するような仕事に神経をすり減らしてしまい、拳銃がなくなってからは家族の信頼を裏切る行為(友人に尋問させる等)がエスカレートする。妻のナジメは夫の体を心配し立場も尊重し娘たちに厳しくあたるが同時に母として彼女たちを守らなければいけないので葛藤に揺れる。長女レズワンは今起きていることに対し正しい意見が言える新しい考えの女性だ。次女のサナは子供だと思っていたが実は冷静に社会と両親を見ていた。彼女が拳銃を隠した理由は不明だがイマンが家族を疑い卑劣な行為を繰り返す中で自分自身の正義が芽生えてきたのだろう。結果、どうしようもない悲劇となるが、モハマド・ラスロフ監督が伝えたいイランの今の真実なのだと思う。
監督は国家安全保障関連の罪で実刑判決となるも命がけでイランを脱出し遠隔で映画を完成させたとのこと。又室内以外の街や車の中での撮影はロケなど組めないので全て盗み撮りとのこと。映画のスタッフや俳優も撮影終了後は逮捕リスクがあるのでイランから出たがナジメ役の女優は捕まってしまったらしいです(町山智浩氏のコラムより)。
決死の覚悟で作られた映画です。アカデミー賞獲って欲しいです。

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アベちゃん

5.0脚本が凄い

2025年2月19日
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ドイツに亡命し命懸けで撮った167分の大作
だが銃はどこにいったのかというサスペンスドラマとしても面白い。革命裁判所、過激なデモは遠い国のニュースの中の世界に思えるがスマホ映像の生々しさにどんどん引き込まれた。最初は親の立場で感じ、その後は娘の立場で思う。家族を養うためにメンタルやられながら父は頑張ってるんだぞという思いからの展開が凄い。男尊女卑な「昭和」を「女性」で過ごした人は共感部分も多そう

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木曜日

3.5ドイツ代表作品

2025年2月19日
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第97回アカデミー賞では“ドイツ代表作品”として国際長編映画賞にノミネートされた本作。監督の来歴をWikipediaなどで確認すれば判る通り、大変厳しい状況下でも諦めることなく「表現」し続け、いよいよ祖国を離れドイツへの亡命したニュースなどを聞いていたこともあり、非常に興味深く待っていた作品です。TOHOシネマズシャンテ、サービスデイ10時15分からの回はそこそこの客入り。
2022年にイランで起きたマフサ・アミニさんの不審死が発端となり、その後イラン全土に発展したイラン反政府デモが背景となる本作。作品内でも時より、当時SNS等で発信・拡散された動画を織り込みながらの映像は非常に生々しく、目を覆いたくなるシーンもありますが、作品を観終わればむしろ同国に対する「興味」がより深まること必然です。
良く練られた脚本はドラマ性が高い上に、当時のイランの状況や問題がよく解る内容で、リアリティーを強く感じさせるフィクションに仕上がっています。そして、作品内における女性、特に若い世代のセリフの一つ一つが芯を喰っているからこそ、旧態依然としたままのさばり続ける男性、権力、ひいてはイラン政府に対して「NO」を突きつける強い意志が感じられます。勿論、メッセージ性だけでなく物語りとしても非常に面白く、特に作品の中心となる一家それぞれのパーソナリティと、夫の「職業設定」が絶妙です。そして、夫・妻・娘たちそれぞれの群像劇で動き出すストーリーは、ある「事件」をきっかけに全方向に対して疑心暗鬼。中盤以降は「一体どこへ向かうのかと」とくらくらするほど予測不能な展開はスリル満点で、上映時間167分とやや長めの尺ですが、ダレることなく最後まで目が離せません。
勿論、イスラム教やヘジャーブ(ヒジャブ)のことなど、Wikipediaを斜めに読んだ程度のにわか仕込みで物は言えませんが、抗議デモにおけるスローガン「女性、命、自由」が強く印象に残る一方、どの世界にも共通する「ダメな男達」の存在に改めて、他山の石としなければ思う私は、モハマド・ラスロフ監督と同世代(正確には一つ年上)。。実に素晴らしい作品だと思います。

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TWDera

3.0聖戦

2025年2月19日
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uz

4.0167分は長い

2025年2月19日
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悲しい

知的

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正山小種

3.0動機が不明確

2025年2月19日
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ゆー

4.0「女性・命・自由」 2022年のマフサ・アミニの死(ヘジャブの着け...

2025年2月19日
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「女性・命・自由」
2022年のマフサ・アミニの死(ヘジャブの着け方を理由に道徳警察に拘束されて3日後に死亡した事件)をリアルに扱っているので「本物感」が強い。
公式の解説や予告編に「家の中で消えた銃をめぐって家庭内に疑心暗鬼が広がっていく様子をスリリングに描いたサスペンススリラー」とあるが、銃が紛失するのは伏せてた方が緊張感があって良かったような。
でも緊張感はしっかりあって終盤に向けて盛り上がる。
縦長のスマホ映像は本物だろうし、神が頂点の国イランだと私は死刑だろうから想像すると怖い。女性はさらに窮屈だろう。
この映画は、町山智浩さんの解説が参考になる。鑑賞前よりは鑑賞後に見るのが良いかも。"町山智浩 映画『聖なるイチジクの種』『TATAMI』2025.02.11"

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ナイン・わんわん

4.0娘よりも母親の姿に抑圧の根深さを感じる

2025年2月19日
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興奮

知的

難しい

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タランティン・クエンティーノ

3.5現代に生きる、中東の人々の価値観

2025年2月18日
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怖い

知的

難しい

一昨年「聖地には蜘蛛が巣を張る」というイラン舞台の娼婦連続殺人をモチーフとする映画を見て以来、イスラム社会に興味が尽きないので、今回鑑賞

「蜘蛛が…」で違和感を感じたのは、イスラム社会での女性への圧倒的差別。職場でも家庭でも、女性は男性に従属することを求められる。どんなに能力がある女性であっても、である
そして「聖なる…」でも妻は夫に傅かんばかりに尽くす(途中、親父の身だしなみ&毛染め&シャワーシーンがあったけど、アレいる?)。大学生の長女と、高校生(?)の次女も、家庭では現代っ子らしく親に口ごたえするが、結局母親には逆らわない
ヒジャブをまとった姿は取っつきにくい感じがあるが、家で床に寝転び、喋りながら毛抜きで娘の眉を整える母の姿は何処の国も同じようで微笑ましい

ヒジャブを着用しなかったことで拘置所に連行直後に亡くなった女性(アフサ・アミニさん)に対する抗議デモが頻発し、国中が混乱しつつあるイラン
そんな時、裁判所の予審判事として昇進したイマン。その職務はでっち上げの起訴状を認めるだけの、警察組織の傀儡ともいえる仕事で、それへの不満を隠さない彼は上司には嫌われていて、ようやく認められた昇進であった

裁判所の廊下が画面の端によく映るのだが、引きずられていく収監者、警官に連行される人々、廊下のドアの前にじっと亡霊のように佇む女性(そこで待ってろ!とか言われたのか…?)、裁判所がちょっとしたホラー
裁判所のドアごとに謎の等身大の男性が佇むパネルがズラリと並んでいて、あれ何なの?中東の濃い顔がにこやかに笑っているが、お化け屋敷のよう…

昇進し広い官舎に移れると、妻(ナジメ)は素直に喜びを示すが、夫はこれからもっと意にそまない仕事をせねばならないストレスから逃れられない
反政府組織に狙われることを懸念し、親しい上司に護身用の銃を与えられるが、それを紛失してしまい…というのがメインの筋立て

そこに至るまでが意外と長い。長女(レズワン)が友だちを家に招く、和やかな談笑の居間で娘は密かにスマホで抗議デモをチェック、次女(サナ)学校の制服の注文に行く…日常のシーンが多くて、肝心の銃が出てくるまで1時間はかかったかな?
私達があまり見たことのない中東の人々の普通の生活なので飽きずに見られるが、さすがにちょっと尺長めかなぁ。途中少し眠気が…

銃の紛失が出世の汚点になりかねないので、夫は家族を問い詰め、妻は子ども達の持物を総ざらいさせてまで探す。そこから何故だか、親戚の尋問のプロの男性との面談させられ、それでも銃は出てこない……

作中のデモのシーンは全て本物だそうで、演出ではない民衆の怒りが空気感で伝わる。がんじがらめに縛る神権政治(神のご意思だ、で全て決められる政治体制)への抵抗運動と、アメリカのトランプ政権に象徴されるような大衆的民主主義が、この現代世界にそれぞれ同時に存在していることがまさしく驚異と感じる

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オパーリンブルー