「父の本性〜自由を抑圧するイラン国家そのものか?」聖なるイチジクの種 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
父の本性〜自由を抑圧するイラン国家そのものか?
衝撃作でした。
平和な国では絶対に描けない作品と表現。
監督も出演者もスタッフも命懸けの撮影だったとか。
監督は完成前に逮捕が迫り、走って国境を越えて国外脱出。
その後の撮影はズームで演出したそうです。
父親が見せる仕事での悩み・・・死刑執行に押印する苦悩・・・
そんなもの見せかけのポーズでしかなかった。
いえ、妻や娘に豊かな暮らしをさせるために、
魂を売って頑張ってきたのでしょう、20年も。
心は蝕まれています。
それにしても次女の用意周到と猫かぶりは母親譲り‼️
(いえ、イランで良い暮らしをするための女の方便や駆け引き)を
如実に表すものでした。
仮面夫婦という言葉がありますが、この家族は、
《仮面家族》だった。
スマホで世界の現実を寸時に知れるし、イラン国家の歪みも
若者は容易く知ることが出来る。
学生のデモが多発している現実。
【マフサ・アニミの死】への抗議運動に揺れる2022年を舞台にしている。
反ヒジャブ運動では大学生が500人も政府に殺されたと聞きます。
その時期を背景に、反政府運動が激化したので、父親は身を守るために
政府から護身用に拳銃を配られたのです。
エリート公務員一家が一丁の銃を巡って崩壊する様を描くサスペンス。
ヒジャブで髪を隠して大人しくしてろと言われる女たち。
抑圧されてるし、不自由だし、そんなことを守ってる社会は
馬鹿馬鹿しいし可笑しい。
ラストに使われる父親に追いかけられる母親と姉妹が逃げる回廊は
イランの遺跡なのだろうか?
とても効果的な映像を演出している。
ストシーンは、デモの様子をスマホで写して流しているが、
残された女3人の女たちのその後は?
フィクションだが、彼女たちはどうなる?
それを知りたい。
そして寄生木のイチジクが寄生して乗っ取ってしまう元の木は
はたして民主化勢力なのか?
弾圧国家なのか?
その答えは歴史が何年後かに示すのでしょうか?
読ませていただきました。それにしても最近のイラン映画は熱いですね。こんな言い方は語弊がありますが、やはり芸術は国家から弾圧されるとより創作意欲が燃え上がるのかもしれませんね。そういう意味ではこれからのアメリカ映画も楽しみです。
あのお父さん自身もけして悪い人ではなく国の体制に取り込まれた悲しい人間なのだと思いました。かつての日本も国の言いなりになり戦争に行かざるを得なかった人々がいたように。